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感染症対策

コロナ飲み薬モルヌピラビル、米国では「最後の選択肢」に

2022年2月7日(月)11時32分

低所得国ではジェネリック医薬品(後発薬)メーカー十数社がモルヌピラビルを生産する予定だが、今後の需要は不透明だ。

リフィニティブがまとめた米金融機関の予想によると、モルヌピラビルの販売額は今年50億ドル(約5750億円)超、パクスロビドは230億ドル近くに上る見通しだ。

使用を厳格管理する国も

米政府はモルヌピラビルに約22億ドル、パクスロビドに約53億ドルを投じ、確保分の約85%を州に、残り15%を各コミュニティの健康センターに直接、それぞれ配布した。

両方とも飲み薬だが、機能は異なる。モルヌピラビルはコロナウイルスの遺伝子コードにエラーを起こす仕組み。安全上の潜在的な問題を避けるため、利用時には男女ともに適切な避妊を行うよう指示される。

パクスロビドは、ウイルスの増殖に必要なプロテアーゼと呼ばれる酵素の生産を阻害する。既存の抗HIV薬、リトナビルを含む2種類の錠剤を使う治療法で、リトナビルは有効性を高める一方、患者が使用中の他の医薬品に影響を及ぼす場合がある。

米国以外の一部の国は、モルヌピラビルの使用を厳密に管理している。

英国では、高リスク患者が希望すればモルヌピラビルの臨床試験を受けることができるが、広く供給されていはいない。フランスはモルヌピラビルを全く利用しておらず、注文も撤回した。

イタリアでは地域ごとにルールが異なるが、まず一般開業医が患者をモルヌピラビルの処方可能な新型コロナ医療団体に紹介するよう義務付けている場合が多い。

一部の低所得国では、モルヌピラビルのジェネリック薬が安価で手に入る。バングラデシュの医療専門家によると、同国ではモルヌピラビルの方がライバル薬に比べてずっと安く、一般国民に広く利用されている。

当局がランク付け

米国立衛生研究所は、リスクのある患者に対する最優先の治療法としてパクスロビドを推奨している。次に優先度が高いのはソトロビマブで、レムデシビルは3位だ。

マサチューセッツ・ジェネラル病院の感染症専門家ラジェシュ・ガンジー氏は「モルヌピラビルに関しては、私は新型コロナの重症化リスクが高い人に使う。ただし、パクスロビドやソトロビマブ、レムデシビルなど他の選択肢が入手あるいは利用不可能な場合に限られる」と述べた。

(Deena Beasley記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

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