最新記事

ウクライナ情勢

ウクライナ大統領、米のパニック的対応を批判「われわれはタイタニック号ではない」

2022年1月29日(土)13時54分
ウクライナのゼレンスキー大統領

ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアとの緊張がさらにエスカレートする可能性は排除できないとしながらも、西側諸国の「パニック」的対応が同国経済に重くのしかかっていると批判した。写真は2020年10月、ブリュッセルで記者会見するゼレンスキー大統領(2022年 ロイター/Stephanie Lecocq)

ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、ロシアとの緊張がさらにエスカレートする可能性は排除できないとしながらも、ウクライナは沈没した豪華客船タイタニック号ではないと強調した上で、米政府やメディアの「パニック」的な対応が同国経済に重くのしかかっていると批判した。

海外メディア向けの記者会見で「戦車が街中を走っているわけではないにもかかわらず、メディアはまるでウクライナが戦争をしている、軍隊が街中にいる、というような印象を与えている。そのようなことはなく、このようなパニックは必要ない」と述べた。

その上で「現在の状況が以前よりも緊迫しているとは考えていない」としつつも「事態がエスカレートする可能性がないとは言えない」と語った。

また、前日に実施したバイデン米大統領との電話会談で、ホワイトハウスが大規模な戦争が起こるリスクを過度に強調するのは「誤り」であることを伝えたと明かした。

米英による大使館職員の退避についても誤りであり、大げさだと主張。「われわれはタイタニック号ではない。ウクライナは前進している」と語った。

さらにウクライナは外貨準備を用いて通貨フリブナの安定を図るとともに、西側諸国に軍事的、政治的、経済的支援を求めているとし、経済安定に向けて40─50億ドルが必要だと指摘。ウクライナにとっての主なリスクは、経済危機を含む内部からの不安定化であると述べた。

このほか、ウクライナの安全保障にとって北大西洋条約機構(NATO)が唯一のよりどころであるとし、NATOに加盟する他の東欧諸国もサイバー攻撃やロシアの威嚇戦術の標的となる可能性があると警告。「これはNATOにとって非常に深刻な課題だ。欧州各国の中には、リスクを取らず、ウクライナへの関与を避けようと考えるところもある。しかし本格的な戦争が勃発すれば、他のNATO加盟国の国境にも波及し得る」とした。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ウクライナ危機で分断される欧州 米と連携強める英 宥和政策の独 独自外交唱える仏
・【ウクライナ侵攻軍事シナリオ】ロシア軍の破壊的ミサイルがキエフ上空も圧倒し、西側は手も足も出ない
・バイデン政権、ロシアのウクライナ侵攻準備を懸念「偽旗作戦の工作員が配置された」


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

IMFは「ゴルフ場売却を」、米財務長官 中核責務へ

ビジネス

JPモルガンとゴールドマン、中国事業継続 米中緊張

ビジネス

寄り付きの日経平均は続伸、米ナスダック上昇や「高市

ワールド

英財務相、富裕層増税を予算に盛り込む考え=英紙
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇跡の成長をもたらしたフレキシキュリティーとは
  • 4
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 5
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 6
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 9
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 10
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中