最新記事

オリンピック

まったく盛り上がらない北京冬季五輪 スポンサーも中国宣伝との批判恐れ異例の地味さ

2022年1月29日(土)13時23分
北京冬季五輪のロゴ

北京冬季五輪(2月4-20日)の開幕が1週間後に迫っているが、米国では今回、国際オリンピック委員会(IOC)や米オリンピック委員会(UOC)などの公式スポンサー企業約20社はいずれも異例なまでに影をひそめている。写真は北京で26日撮影(2022年 ロイター/Fabrizio Bensch)

北京冬季五輪(2月4-20日)の開幕が1週間後に迫っているが、米国では今回、国際オリンピック委員会(IOC)や米オリンピック委員会(UOC)などの公式スポンサー企業約20社はいずれも異例なまでに影をひそめている。米国のテレビ視聴者は開幕日どころか、開催地が中国であることすら忘れていてもおかしくない。

1月26日までに放映が始まった関係広告はわずか2本。どちらも開催国に触れておらず、選手に焦点を絞った内容だ。

ロイターが取材した広告代理店幹部やスポンサー企業によると、大会期間中も同様の広告が続く見通しで、政治色は一切排し、地政学的な問題に関心を呼ぶのを避け、中国政府の威光の宣伝にもならないようにするはずだという。

世界的な五輪スポンサー企業は既に昨年7月、議会に呼ばれ、超党派の議員らから中国での深刻な人権侵害への批判より利益を優先していると非難を浴びた。新疆ウイグル自治区などでの人権侵害問題を巡っては、スポンサー企業は人権団体からも、問題を容認していると強く批判されている。

米広告代理店ディマッシモ・ゴールドスタインの創業者マーク・ディマッシモ氏によると、バイデン米政権が昨年12月に北京五輪・パラリンピックの外交ボイコットを発表した直後、顧客企業は「友愛心」、「世界の結束」、「良きスポーツマンシップ」といった伝統的な五輪のテーマは広告で打ち出さないことを決めた。

IOC公式スポンサーのブリヂストンが今月放映を始めた広告は、アジア系米国人のフィギュアスケート男子のネーサン・チェン選手を起用し、「出身国や人種を一切想起させない」スケート競技そのものに焦点を当てる意図になっている。

チームUSAの公式航空会社のデルタ航空はスノーボード選手とフィギュアスケート選手が出てくる2種類の広告を流しているが、北京五輪には触れない内容だ。

過去の五輪では、五輪の平和と友愛の精神と一緒に開催国の文化をたたえる広告が中心だった。専門家によると、今回は世界の大舞台で競う選手に焦点を絞った広告にするのが企業にとって最も無難な戦略だと見なされている。米コカ・コーラは2008年夏季北京五輪で同社飲料からストローを鳥たちが取って「鳥の巣」の形をした競技会場のレプリカをつくっていくアニメ映像を流したものだが、今回はそんな広告はない。

メキシコ料理チェーンの米チポトレ・メキシカン・グリルは大会期間中、「本物のアスリートのための本物の食事」をうたう広告を打つ予定。クリス・ブラント最高マーケティング責任者は、「地政学的な含みは一切排除したい」と述べた。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・中国の不動産バブルは弾けるか? 恒大集団の破綻が経済戦略の転換点に
・中国製スマホ「早急に処分を」リトアニアが重大なリスクを警告
・武漢研究所、遺伝子操作でヒトへの感染力を強める実験を計画していた



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドル一時153.00円まで4円超下落、現在154円

ビジネス

FRB、金利据え置き インフレ巡る「進展の欠如」指

ビジネス

NY外為市場=ドル一時153円台に急落、介入観測が

ビジネス

〔情報BOX〕パウエル米FRB議長の会見要旨
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 9

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中