最新記事

軍事衝突

台湾危機の「T-DAY」は間近い? 6つの有事シナリオ

2021年12月1日(水)17時53分
中国と台湾の旗と軍用機のイメージ

台湾奪取を目指す中国は、平時ではないものの、軍事衝突とも言えない「グレーゾーン」戦略に乗り出している。写真は中国と台湾の旗と軍用機のイメージ。4月撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic)

台湾奪取を目指す中国は、平時ではないものの、軍事衝突とも言えない「グレーゾーン」戦略に乗り出している。それがどういう結果をもたらし得るのか、安全保障政策の当局者や軍事専門家に取材し、シナリオを検証した。

内戦に勝利した共産党が中華人民共和国を樹立し、敗れた国民党が台湾へ逃れてから72年、中国は米国と対抗する大国となり、台湾は米国の支援を受けて民主化を実現、ハイテク産業の集積地となった。両岸関係は数十年に及ぶ膠着状態を経て、再び衝突のリスクが高まっている。長く続くこの対立がどう展開するのか予測不可能だが、台湾を巡る戦いは水面下ですでに始まっている。

ロイターは昨年、中国人民解放軍が台湾に「グレーゾーン」戦略をすでに展開していると報じた。武力衝突までは引き起こさない軍事演習や警戒・監視活動を、ほぼ毎日繰り返しているという内容だ。以来、中国側は台湾空域にたびたび軍用機を派遣し、中国沿岸に近い台湾の群島周辺に海砂採取船の船団を送り込むなど、事態をエスカレートさせている。

「グレーゾーン」戦略が奏功するのか失敗するのか未来を見通すのは難しいが、中国、台湾、米国、日本、オーストラリアで安全保障政策に携わる当局者らは、中国が台湾奪取のためにどう動くのか、台湾と米国は同盟国とともにどうそれを阻止しようとするのか、さまざまなシナリオを想定してシミュレーションを重ねている。

中国は幅広い戦術を取り得ると専門家は指摘する。習近平国家主席と共産党政権にとってリスクをはらむ一方、台湾、米国、さらに同盟国、とりわけ日本は難しい対応を迫られる。習政権の選択肢には台湾の離島制圧、台湾本島の封鎖、全面侵攻が含まれる。南シナ海北部に位置する守りが手薄な東沙諸島の奪取が「次の一手」と予測する専門家も複数いる。いずれも制御不能な事態を招き、台湾を巡って米中が戦争に突入する可能性がある。

様々なシナリオのうち、ここではそのいくつかを検証した。台湾、米国、オーストラリア、日本の軍事専門家10人以上、さらに現役と退役軍人15人にインタビューをした。専門メディアのほか、米軍や中国軍、台湾軍が刊行する出版物も参照した。シナリオという性質上、推論に基づくものであり、ロイターが予測したものではない。

中国外務省報道官はロイターの問い合わせに対し、「仮定の報道」には答えないとしてコメントを拒否した。一方で、台湾与党の民進党と「独立」を志向する勢力は、他国と共謀して常態的に挑発行為を行っており、これが現在の台湾海峡の緊張と騒乱の根本原因になっているとした。

米国防総省の報道官は、ここで触れた「具体的な作戦や関与、訓練」についてコメントしないと回答した。一方で、中国は「台湾や他の同盟国を威圧し圧力を加えようとする動きを強化している」と述べた。多大な影響を受け得る日本の防衛省も「仮定の質問や推測」にはコメントできないとしたが、政権幹部は米国が台湾を防衛することになれば支援することになると発言している。

世論調査と最近の選挙結果によれば、2350万人の台湾住民は自分たちを「中国人」より「台湾人」とみなし、米国との経済・外交関係の強化を支持している。香港に対する中国政府の締め付けを目の当たりにし、台湾人のこうした感情はより高まっている。蔡英文総統は、台湾は自らの自由と民主的な生活を守ると繰り返し強調している。

台湾国防部はロイターの取材に対し。「共産党軍」が台湾進攻に向けて取り得る行動や試みについては、「対抗策や様々な戦闘計画を立案している」と文書で回答した。

偉大な中華民族の復興を掲げる習国家主席が明言していることが一つある。アジア太平洋を何世紀にもわたって独占してきた地位を取り戻すには、台湾統一は実現しなければならないし、実現する、ということだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏が閣僚刷新検討 イラン戦争が打撃 選挙控

ワールド

商船三井のLPG船がホルムズ海峡を通過 日本関係2

ワールド

ドバイの米オラクル施設に迎撃破片が落下、負傷者なし

ワールド

トランプ政権による大学への人種データ開示命令を仮差
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 5
    イラン戦争は「ハルマゲドンの前兆」か? トランプ…
  • 6
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 7
    【写真特集】天山山脈を生きるオオカミハンター
  • 8
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 9
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 10
    中国は「アカデミズムの支配」を狙っている? 学術誌…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 4
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が…
  • 5
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 6
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 7
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 8
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 9
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 10
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中