最新記事

香港

議会選挙を拘置所で迎えた香港民主派 活動封じられても不屈の意思

2021年12月19日(日)12時02分

香港政府の鄭若驊(テレサ・チェン)司法長官は16日、今回の立法会選挙候補者は以前の選挙よりも年齢、職業、経歴の面で多様化していると述べた。林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官はこれまで、立法会選挙は「参加者のバランスが高まり、ずっと(民意を)代表する」ようになっており、「香港を統治すべき愛国者」が選出されると主張している。

拘置所の生活

現在拘置所にいる33人の民主派は、来年3月まで法廷に姿を見せることもなければ、具体的にいつ審理が開始されるかまだ発表もない。

香港で男性の未決囚が入る最大規模のスタンリー拘置所には、予備選挙にかかわった戴耀廷(ベニー・タイ)氏(57)と梁国雄(レオン・クオクホン)氏(65)が収監されている。黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏(25)がいるのは別の拘置所だ。

ある人は独房に監禁され、別の人は集団の留置スペースにいる。女性では、予備選に参加した元議員の毛孟静(クラウディア・モー)氏(64)と袁嘉蔚(ティファニー・ユン)氏(28)がニューテリトリー(新界)の拘置所にいる。事情に詳しい2人の関係者によると、ユン氏は当局から留置場所で不穏な行動をしたとみなされ、9月に独房に入ったという。

拘置所内の民主派は、睡眠、運動、食事、勉強を毎日決まった時間に行う。夜明け直後に起床の号令があり、1時間は運動とシャワーが許される。男性の場合、監視付きでランニングやサッカー、バスケットボールなどができる。これら未決囚は1日2人まで食物の差し入れのための面会が認められている。関係者の話では、支給された2本のペンで書き物をする、あるいは1カ月で6冊まで許可される書籍を読むといった過ごし方をする人もいる。

抵抗拠点

英政府は14日公表した香港情勢に関する半期報告書で、民主派拘束の詳しい経緯に触れつつ、行政権に対するチェック・アンド・バランスの機能を弱めるために、異なる意見を自由に表明する場が抑え込まれ続けていると警鐘を鳴らした。その上で、3月の香港選挙制度変更は中国本土や香港政府と足並みをそろえない勢力を、ほぼ完全に立法府から排除する狙いがあると指摘した。

拘束された民主派のうち14人は保釈されている。彼らの数人は、法的リスクがあると承知しながらも、19日の選挙で香港市民は棄権するか白票を投じるべきだとロイターに語った。香港当局はここ数週間で、白票の投票を扇動したとして10人を逮捕している。

別の民主派は白票と棄権について「今われわれにできることは乏しいが、これが抵抗拠点の1つになる。外国に亡命していても、拘置所にいても、あるいは香港社会にとどまっていても、外部環境によって心を蝕まれてはならない」と強調した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・中国の不動産バブルは弾けるか? 恒大集団の破綻が経済戦略の転換点に
・中国製スマホ「早急に処分を」リトアニアが重大なリスクを警告
・武漢研究所、遺伝子操作でヒトへの感染力を強める実験を計画していた



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、第1四半期は予想上回る増収 A

ワールド

韓国、在外公館のテロ警戒レベル引き上げ 北朝鮮が攻

ビジネス

香港GDP、第1四半期は+2.7% 金融引き締め長

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中