最新記事

五輪ボイコット

米豪に続きイギリスも。北京冬季五輪の「外交的ボイコット」相次ぐ

U.K. Joins U.S., Australia Boycott of Beijing Olympics, Still Sending Athletes to Compete

2021年12月9日(木)20時24分
ケイティー・ワーマス
北京五輪反対デモ

北京冬季五輪ボイコットを呼びかける活動家たち(6月、ジャカルタ) Ajeng Dinar Ulfiana-REUTERS

<豪首相は「最も国益に叶う」と発言、中国は2028年ロス五輪の報復ボイコットを示唆>

イギリス政府は8日、中国の人権問題を理由に来年2〜3月に開催予定の北京冬季五輪を「外交的ボイコット」すると発表した。選手団の派遣は認める。

北京冬季五輪を巡っては、少数民族に対する虐殺や人道に反する犯罪などの人権問題から、アメリカやオーストラリアなど外交的ボイコットを表明する国が相次いでいる。

イギリスのボリス・ジョンソン首相は下院で、政府関係者を派遣しないいわゆる外交的ボイコットを行うと述べた。だが、選手の出場に影響が出るようなボイコットには反対の考えを示した。

「政府は中国に対してこうした問題を提起することに何のちゅうちょもない。私が最後に習近平(シー・チンピン)主席と話した時もそうだった」とジョンソンは述べた。

アメリカ政府は6日に外交的ボイコットを表明。ただし選手団は派遣するとした。

「(政府は)この瞬間のために練習を重ね準備してきた選手たちにペナルティーを科すことが正しい措置だとは思わないし、正式な代表団を送らないことで正しいメッセージが伝わるとも思っていない」とホワイトハウスのジェニファー・サキ報道官は述べた。

オーストラリア政府もアメリカと足並みをそろえ、外交的ボイコットを表明。スコット・モリソン首相はこれが最も国益に叶う「正しい対応」だと述べた。

「出場選手の成功に向けた支援は惜しまない」

中国外務省の汪文斌(ワン・ウエンビン)報道官はオーストラリアの決定を非難するとともに、「中国はいかなるオーストラリア政府関係者も冬季五輪に招待していない。彼らが来ようが来まいが誰も気にしない」と述べた。

オーストラリアの選手は、本人が望めば出場は認められる。

「オーストラリアの選手たちはこれまでの4年間、オリンピックの夢に向かって練習し競い合ってきた。われわれは全力を挙げて彼らの成功に力を貸す」と、オーストラリア・オリンピック委員会のマット・キャロルCEOは述べた。

北京冬季五輪の外交的ボイコットを表明したのはこれまでのところ、アメリカにリトアニア、ニュージーランド、スコットランド、オーストラリア、イギリスの6 カ国・地域。

「北京冬季五輪は事実上の外交的ボイコットをすることになるだろう」とジョンソン英首相は下院で述べた。「閣僚や政府高官が出席する予定もない」

中国の人権侵害に抗議するために外交的ボイコットを行うとしたホワイトハウスに対し、中国は「断固たる対抗措置」を取るとしている。中国共産党傘下の英字新聞チャイナデイリーのチャン・ウェイフアEU支局長は、「(高齢の)バイデン大統領が、2028年のロサンゼルス五輪を中国がボイコットするのを見るまで長生きできるだろうか」と辛辣なツイートを出した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中