最新記事

朝鮮戦争

バイデン政権、南北朝鮮の「終戦宣言」に舵切る 文政権と連携

Biden Commits to North Korea Peace as U.S., South Korea Discuss Ending War

2021年11月30日(火)18時32分
トム・オコナー

金正恩は、米国を「最大の敵」とする表現さえ引っ込めた。代わりにこう述べたのだ。「わが国の最大の敵は、戦争そのものだ。韓国や米国ではないし、そのほかの特定の国や軍隊でもない」

さらに金は、韓国政府に対して、北朝鮮に対する認識を変えることを求め、次のように説明した。「私が望んでいるのは、韓国当局や社会全体が、北をどう見るかという点で、時代遅れで今はふさわしくない懸念や不安、そして、北の脅威を封じ込めなければならないという錯覚と使命感を取り払うことだ。過剰な危機意識と被害妄想から、速やかに脱却することだ」

11月17日にワシントンDCにおいておこなわれた日米韓次官協議でも、終戦宣言の可能性が浮上した。この次官協議には、ウェンディ・シャーマン国務副長官、崔鍾建(チェ・ジョンゴン)韓国外交部第1次官、日本の森健良外務事務次官が出席した。

協議後、崔は話し合いが継続していることを認めた。この非公式協議を主導しているのは、ソン・キム米国北朝鮮担当特別代表と、魯圭悳(ノ・ギュドク)韓国外交部朝鮮半島平和交渉本部長だという。

シャーマンはそれ以前にも報道陣に対し、終戦宣言の実現に関する協議の進展について、「非常に満足している」と話していた。崔も、自身のコメントのなかでその点を強調し、ほかの主要関係国の参加も期待している、とも述べた。

「終戦宣言には、韓国と米国だけでなく、北朝鮮と、おそらくは中国も参加するべきだ」と、崔はその時述べていた。「韓国と米国が満足したとしても、北朝鮮と中国がどう反応するかは別問題だ」

米韓同盟は平和と安定の要

中国の劉暁明・朝鮮半島問題特別代表は、11月上旬に行われた魯との協議の際に、次のように述べている。「中国は、朝鮮半島問題の重要な関係国、そして朝鮮戦争休戦協定の署名国として、和平協定の促進や終戦宣言の発布などの問題に関して、関係各国との連絡を維持し、建設的な役割を積極的に果たしていくつもりだ」

日米韓次官協議の直前には、バイデンが、中国の習近平国家主席とオンライン首脳会談で直接対話している。中国外交部が後に認めたところによれば、両首脳が協議した話題には、朝鮮半島問題も含まれていたという。

「ホワイトハウスとの協議が持たれたが、他国の元首の見解を断定的に評価するのは、外交上、失礼にあたる」と、ガイは話した。また「ニューヨークのチャンネル(マンハッタンの北朝鮮国連代表)」を通じて北朝鮮政府から直接のコンタクトがあったか否かについてもコメントしなかった。

この問題に関する米韓の協議が継続する一方で、ロイド・オースティン米国防長官は11月30日、53回目となる米韓定例安保協議の一環として、米軍高官や、韓国の徐旭(ソ・ウク)国防相などの韓国高官と会談するためにソウルへ向かった。

米国防総省は声明のなかで、「毎年の定例安保協議は、米韓同盟の発展においてきわめて重要な役割を果たしてきた」と述べている。「この協議は、国としての取り組みを議論し、確認するための足場であり続けている。米韓同盟は、朝鮮半島と北東アジアの平和と安定の要であり、米韓どちらの側も、この同盟を、未来志向で互いに補強しあうかたちで継続的に発展させていくと誓う」

(翻訳:森美歩、ガリレオ)

20240423issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月23日号(4月16日発売)は「老人極貧社会 韓国」特集。老人貧困率は先進国最悪。過酷バイトに食料配給……繫栄から取り残され困窮する高齢者は日本の未来の姿

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米マイクロン、米政府から60億ドルの補助金確保へ=

ビジネス

EU、TikTok簡易版のリスク調査 精神衛生への

ビジネス

米オラクル、日本に80億ドル超投資へ AIインフラ

ワールド

EU首脳、対イラン制裁強化へ 無人機・ミサイル製造
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画って必要なの?

  • 3

    【画像・動画】ヨルダン王室が人類を救う? 慈悲深くも「勇ましい」空軍のサルマ王女

  • 4

    パリ五輪は、オリンピックの歴史上最悪の悲劇「1972…

  • 5

    人類史上最速の人口減少国・韓国...状況を好転させる…

  • 6

    アメリカ製ドローンはウクライナで役に立たなかった

  • 7

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 8

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 9

    対イラン報復、イスラエルに3つの選択肢──核施設攻撃…

  • 10

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...当局が撮影していた、犬の「尋常ではない」様子

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 7

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    温泉じゃなく銭湯! 外国人も魅了する銭湯という日本…

  • 10

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中