最新記事

朝鮮戦争

バイデン政権、南北朝鮮の「終戦宣言」に舵切る 文政権と連携

Biden Commits to North Korea Peace as U.S., South Korea Discuss Ending War

2021年11月30日(火)18時32分
トム・オコナー

「終戦宣言は、平和体制への扉と見なすことが可能だ」とこの高官は述べた。「終戦宣言は実際的かつ実用的なアプローチを行うための、きわめて有効なツールになり得る。これを使って南北朝鮮とアメリカが、すぐに何らかの出費や軍事体制の大幅な変更、法律・制度面の変更を迫られることなく、信頼を築き対話を始めることができる可能性がある」

終戦宣言は「核兵器の開発をはじめ、韓国と北朝鮮の間に軍事的な緊張状態をつくる理由や動機を和らげることにもなる」という。

アメリカをはじめ国際社会の大半は、北朝鮮による核兵器の開発や実験に強く反対しており、国連安保理を通して北朝鮮に制裁を科している。北朝鮮は2018年の和平プロセスに先立ち、核実験と長距離ミサイルの発射実験を中止。現在も再開はしていないが、射程距離がより短い兵器については、その後も何度も発射実験を行ってきた。

トランプ時代の対話は上手くいかなかったが、文はその後も北朝鮮との緊張を緩和し、和平協議を再開するための取り組みを続けてきた。戦争終結に向けた南北朝鮮の意欲は、少なくとも2つの主な宣言に記されてきた。2018年4月に文在寅と北朝鮮の最高指導者である金正恩による南北首脳会談の後に出された共同宣言と、その前に行われた最後の南北首脳会談である、2007年10月の会談後に出された共同宣言だ。

金与正「興味深い」と一定の評価

前述の韓国統一省の高官は、この2つの宣言の抜粋を本誌に提供。彼によれば、文が9月の国連総会での演説などで、朝鮮戦争の終戦宣言を呼びかけたことに対して、北朝鮮側からは前向きな反応があったという。

「北朝鮮は最近、終戦宣言を受け入れる条件として、(韓国の軍備増強は平和のためだが北朝鮮のそれは挑発とする)二重基準と敵視政策を撤回することを求めたが、前向きな反応も示している。(金正恩の妹である)金与正は9月24日に発表した声明の中で、朝鮮戦争を正式に終結させるという文在寅の提案について、『興味深く、良い発想だ』と述べている」とこの高官は述べた。

金与正が終戦宣言について、文の考えを前向きに受け止めたことは、トランプとの和平協議が決裂して以降、北朝鮮が取ってきた強硬路線からのシフトと見なされた。金与正が声明を出したすぐ後、金正恩は南北間の通信連絡線を再開する意向を表明。10月4日に、通信連絡線が再開された。

また金正恩は、10月に国防発展展覧会で行った演説の中で、韓国がアメリカと合同軍事演習を行ったことを厳しく非難し、自衛のために今後も兵器開発を推し進めると主張。だが一方で、北朝鮮の軍備増強は韓国を標的として行うものではないとも述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 6
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 7
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 8
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    日本人は本当に「無宗教」なのか?...「灯台下暗し」…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 6
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 7
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中