最新記事
アラブ世界

日本人には分かりにくい「アラブ」「中東」「イスラム」の違いって?

2021年11月25日(木)19時25分
アルモーメン・アブドーラ(東海大学教授)
「アラブ」「中東」「イスラム」

写真はイメージです kotoffei-iStock

<政治や経済だけでなく、留学に観光など国民レベルの交流も深まってきた日本とアラブ諸国──互いを理解するために、3つの言葉の意味するところをぜひ知ってほしい>

エジプト出身の私が初めて日本に来たばかりの頃に、自分のことを周りの人に伝えると、「ああ、中東の方ですね」「イスラムの方ですか」「アラブの盟主の国ですね」との言葉を返してくる人が多かったことを今も覚えている。

日本人はこの3つの言葉「アラブ」「中東」「イスラム」を同じような意味で捉えていることがそこで初めてわかった。実際、これらの言葉は全く別のことを意味するのではなく、互いに交差しているところが大きい。

近年は日本とアラブ諸国間で、政治や経済、留学、観光など諸分野の交流が徐々に深まり、双方の接触する機会が増えている。国民レベルの交流は今後ますます広がり、深まっていくことだろう。

ただ、言語と文化の壁により、互いの社会の情報を完全に理解できないことがある。特にアラブ世界と接する際に日本人が常に困惑させられることの一つが,先に述べた「アラブ」と「中東」と「イスラム」という3つの言葉の違いである。

ここで一つクイズを。

「1.エジプト 2.パキスタン 3.イラン 4.トルコ 5.アフガニスタン
これら5つの国はそれぞれ、アラブ、中東、イスラムどの分類に入るでしょうか」

これに答えられるためには、3つの言葉を区別できる基準を知る必要があるだろう。

まず、知っておくべきなのは、この3つの言葉の意味は言語で言うと、よく似ている類義語のような関係にあることである。「アラブ」「中東」「イスラム」は、イスラムの方が意味のスケールが広く、中東とアラブを包み込むような関係にある。イメージ的には次のような図となる。

arab_1.jpg

区別の基準は次の3つの要素で決まる。「言語(アラビア語かそれ以外か)」「宗教(イスラム教の宗派)」「地理的範囲」である。

arab_table.jpg

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権

ワールド

米空港で最大20%減便も、続く政府閉鎖に運輸長官が

ワールド

アングル:マムダニ氏、ニューヨーク市民の心をつかん

ワールド

北朝鮮が「さらなる攻撃的行動」警告、米韓安保協議受
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 3
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統領にキスを迫る男性を捉えた「衝撃映像」に広がる波紋
  • 4
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 7
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中