最新記事

宗教

イスラム教指導者、裏の顔はテロ組織メンバー インドネシア、宗教関係者らに大きな衝撃

2021年11月19日(金)19時55分
大塚智彦
アフマド・ザイン容疑者

聖職者とテロリスト、2つの顔をもつ男アフマド・ザイン容疑者 KOMPAS TV /YouTube

<ムスリムに大きな影響力をもつ指導者は、バリ島爆破事件を実行したテロ組織の非公式幹部だった──>

インドネシアのイスラム教指導者組織のメンバーが国家警察にテロ関連容疑で逮捕されるという衝撃的な事件が起きた。

国家警察の対テロ特殊部隊デンスス88は11月16日、イスラム指導者組織であるインドネシア・ウラマー評議会(MUI)の上級学者アフマド・ザイン・アン・ナジャ容疑者をテロ関連法違反容疑で逮捕したことを明らかにした。

国家警察によると16日、首都ジャカルタの東にある西ジャワ州ブカシの自宅で他の2人の容疑者とともに逮捕されたアフマド・ザイン容疑者は、国際テロ組織アルカイダと関連があるとされるインドネシアのテロ組織ジェマ・イスラミア(JI)の資金調達に関連していた容疑がもたれている。

具体的には「JI」に活動資金を提供するためにアフマド・ザイン容疑者らが慈善団体を設立して資金を集めていたというもので、集まった資金は「JI」が新たなメンバーを獲得する際に使われたとされている。

この慈善団体は社会支援や教育援助という表向きの看板を掲げて、各地に「募金箱」を設置。市民の善意、浄財を資金として集め、それをテロ組織に提供していたという。

国家警察ではアフマド・ザイン容疑者はMUIの幹部でありながら同時に「JI」の非公式幹部会のメンバーとしての顔ももっていた可能性があるとみて追及している。

「JI」は1993年にマレーシアで設立され、精神的指導者とされるイスラム教指導者のアブ・バカル・バシル師の下で勢力を拡大。2003年にインドネシア政府から非合法テロ組織の指定を受け、治安当局による摘発が続いている。

2002年10月にバリ島の繁華街で外国人観光客を含む202人が犠牲となった爆弾テロ事件をはじめ、2003年8月にジャカルタ市内の米国系高級ホテルでの爆弾テロ(12人死亡)、2004年のオーストラリア大使館前での爆弾テロ(9人死亡)などが「JI」の犯行とされ、インドネシアではもっとも過激で危険なテロ組織と認識されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、中国関連企業に土地売却命令 ICBM格納施設に

ビジネス

ENEOSHD、発行済み株式の22.68%上限に自

ビジネス

ノボノルディスク、「ウゴービ」の試験で体重減少効果

ビジネス

豪カンタス航空、7月下旬から上海便運休 需要低迷で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 5

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中