最新記事

韓国大統領選

韓国、保守に政権交代なら核兵器を配備する方針...米国は「関心なし」と専門家

2021年11月9日(火)17時40分
ミッチ・シン
尹錫烈前検事総長

最大野党「国民の力」の大統領候補に決まった尹錫烈前検事総長 KIM HONG-JIーREUTERS

<来年3月の韓国大統領選に向けて保守派の尹錫悦候補は、アメリカの核兵器の国内配備へ向けた準備を進めるとしたが実現性は低いとの見方が>

2022年3月に行われる韓国大統領選の有力候補が決定した。文在寅(ムン・ジェイン)現大統領の与党「共に民主党」の候補者は李在明(イ・ジェミョン)前京畿道知事。最大野党「国民の力」は尹錫悦(ユン・ソクヨル)前検事総長を選んだ。

世論調査で両党が拮抗していることから、専門家は接戦を予想するが、両候補への支持率と同じぐらい、退任する大統領への感情が選挙結果を左右するかもしれない。最近の世論調査では、60%近くが政権交代を支持している。

もし「尹大統領」が誕生したら、韓国の外交政策はどうなるのか。「文政権は見せ掛けにすぎない北朝鮮の非核化の意思を根拠に国際社会に向け関与の必要性を力説している、と韓国の保守派は一般的に主張する」。梨花女子大学(ソウル)のレーフ・エリック・イーズリー准教授(国際政治)はディプロマット誌にそう語った。

「『国民の力』の候補は、米韓同盟の強化を強調し、北朝鮮の人権侵害や国連制裁違反に関する中国の役割についてもっと声を上げるだろう」と、イーズリーは言う。彼によれば、これまで保守派は北朝鮮の挑発や侮辱に対し、無抵抗に譲歩することはないと主張してきた。

尹は先日、対北朝鮮を含む外交政策の方針を発表したが、驚いたことに文政権の政策と似たような提案を行っている。例えば韓国、アメリカ、北朝鮮間の通信ホットライン開設。北朝鮮への無条件の人道的支援も約束した。後者は従来、共に民主党の代表的な対北政策であり、保守派は北朝鮮の核・ミサイル能力向上を理由に支持を拒んでいた。

「核政策の詳細を知らない者の主張」

ただし、尹は与党が決して採用しない政策も提案した。有事の際、アメリカの核兵器を韓国に配備するための準備と、核の定期的な運用演習を通じてアメリカの「核の傘」への信頼度を高めることだ。アメリカは韓国との「核の共有」に関心がなく、この提案は非現実的だと、専門家は言う。

「核の共有や韓国への戦術核再配備は、米政権の意向や核政策の詳細をよく知らない一部の政治家や学者の国粋主義的主張にすぎない」と、韓国国防大学の金永峻(キム・ヨンジュン)教授は語る。「票集めのための単なる政治的発言だ。米政府が支持する可能性はない」

一部のタカ派政治家や右派活動家は、「北朝鮮は国ではなく、金正恩(キム・ジョンウン)一族を中心とした独裁体制下で人権侵害を繰り返すカルテルだ」と主張して、北朝鮮との交渉に前向きな文政権を攻撃してきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国務長官、ASEAN首脳会議に代理出席 南シナ海

ビジネス

米ペプシコ、24年売上高伸び見通し下方修正 四半期

ワールド

ロシア、ウクライナ南部ヘルソンを砲撃 1人死亡・5

ビジネス

米貿易赤字、8月は704億ドルに大幅縮小 輸出増・
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米経済のリアル
特集:米経済のリアル
2024年10月15日号(10/ 8発売)

経済指標は良好だが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くのアメリカ国民にその実感はない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決闘」方法に「現実はこう」「想像と違う」の声
  • 2
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた「まさかのもの」とは?
  • 3
    ハマス奇襲から1年。「イランの核をまず叩け」と煽るトランプに対するイスラエルの「回答」は
  • 4
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…
  • 5
    「11年に一度」のピークが到来中...オーロラを見るた…
  • 6
    住民仰天! 冠水した道路に「まさかの大型動物」が..…
  • 7
    大型ハリケーン「へリーン」が破壊した小さな町...20…
  • 8
    米副大統領候補対決はハリス陣営の負け。ウォルズが…
  • 9
    ジョージア撤退を仄めかすロシア ...背景には、ウク…
  • 10
    もう「あの頃」に戻れない? 英ウィリアム皇太子とヘ…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティアラが織りなす「感傷的な物語」
  • 3
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はどこに
  • 4
    借金と少子高齢化と買い控え......「デフレ三重苦」…
  • 5
    アラスカ上空でロシア軍機がF16の後方死角からパッシ…
  • 6
    【独占インタビュー】ロバーツ監督が目撃、大谷翔平…
  • 7
    大谷翔平と愛犬デコピンのバッテリーに球場は大歓声…
  • 8
    NewJeansミンジが涙目 夢をかなえた彼女を待ってい…
  • 9
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決…
  • 10
    羽生結弦がいま「能登に伝えたい」思い...被災地支援…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 3
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 4
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 5
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 6
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 7
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 8
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 9
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…
  • 10
    キャサリン妃の「外交ファッション」は圧倒的存在感.…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中