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感染症対策

ファイザーのコロナ経口治療薬、重症化リスク89%減 近くFDAにデータ提出

2021年11月6日(土)10時42分

米製薬大手ファイザーは開発中の新型コロナウイルス感染症を治療する飲み薬について、入院と死亡のリスクが89%低下したとの臨床試験(治験)結果を発表した。ブーラ最高経営責任者(CEO)は緊急使用許可申請の一環として、今月25日までに米食品医薬品局(FDA)に治験の暫定結果を提出するとしている。写真は9月29日撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic)

米製薬大手ファイザーは5日、開発中の新型コロナウイルス感染症を治療する飲み薬について、入院と死亡のリスクが89%低下したとの臨床試験(治験)結果を発表した。ブーラ最高経営責任者(CEO)は緊急使用許可申請の一環として、今月25日までに米食品医薬品局(FDA)に治験の暫定結果を提出するとしている。

ファイザーが治験を実施したのは、既存の抗ウイルス薬「リトナビル」と開発中の新型コロナ治療薬を併用する治療法で、ブランド名は「パクスロビド(Paxlovid)」。1日2回、3錠を投与する。

治験は、軽・中程度の新型コロナ感染症と診断された患者で、肥満や高齢など重症化リスクを少なくとも一つ抱えている人を対象に実施。1219人の患者を分析した結果、症状が出てから3日以内にパクスロビドの投与を開始した患者のうち、投与開始から28日以内に入院が必要になった患者は0.8%にとどまった。死亡者はゼロだった。プラセボ(偽薬)の投与を受けたグループでは7%が入院し、7人が死亡した。

症状が出てから5日以内に投与を開始した場合では、入院率は1%。これに対しプラセボの投与を受けたグループの入院率は6.7%で、10人が死亡した。ブーラCEOによると、この結果は有効率85%に相当する。

副反応については詳細を明らかにしなかったが、パクスロビド投与とプラセボ投与の双方のグループで約20%が何らかの不調を訴えた。リトナビルの副反応には吐き気や下痢が含まれる。

ファイザーは良好な結果が得られたため治験を早期に打ち切った。製造量の見通しについては、2021年末までに18万パック以上、22年末までに少なくとも5000万パック以上とした。

バイデン米大統領は、米政府はファイザー製の飲み薬を大量に確保したと表明。「FDAが承認すれば、すぐに感染者を治療できる飲み薬が用意できる」と述べた。

新型コロナ感染症治療の飲み薬を巡っては、英医薬品・医療製品規制庁(MHRA)が4日、米製薬大手メルクがリッジバック・バイオセラピューティクスと共同開発した「モルヌピラビル」を承認。世界で初めて新型コロナの飲み薬が承認された。

ブーラCEOはインタビューで、パクスロビドの供給契約について90カ国と協議していると表明。価格はメルクの飲み薬の価格に近いものになるとした。メルクの米国での契約価格は5日間の治療コースで約700ドル。

米国ではFDAの外部専門委員が30日に会合を開き、メルクの飲み薬について討議。ファイザーは、同会合でパクスロビドについても討議されるかは把握していないとした。

[ロイター]


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