最新記事

人権問題

ミャンマー、禁固11年判決出たばかりの米国人記者釈放 米特使らの訪問が影響か

2021年11月16日(火)11時56分
大塚智彦
釈放されたダニー・フェンサー

釈放されたダニー・フェンサーはカタール到着後、インタビューに答えた。Click On Detroit | Local 4 | WDIV - YouTube

<実刑判決が出たばかりのジャーナリストを突然開放。その背景にあるのは──>

ミャンマー軍政によって逮捕され、11月12日に公判で扇動罪や入国管理法違反などの容疑で禁固11年の実刑判決を受けた米国人記者ダニー・フェンサー氏が15日に突然釈放され、すでにミャンマーを出国し米国に向かう経由地の中東カタールに到着したことが明らかになった。

これはフェンスター記者が編集幹部を務めていた独立系メディア「フロンティア・ミャンマー」が明らかにしたもので、11月2日にミャンマーを訪問して軍政トップのミン・アウン・フライン国軍司令官と面会して釈放を求めたビル・リチャードソン米元国連大使が同行して出国したという。リチャードソン元大使はミン・アウン・フライン国軍司令官との面会でフェンスター記者の釈放を強く求めており、結果的にはこの面会が今回の釈放の大きなきっかけになったといえるだろう。

ミャンマー軍政は今回の突然の措置に関してメディアに対して「米国との緊密な関係を考慮して決めた人道的措置である」として釈放の理由に米国との外交関係、人道的立場の尊重があることを強調したという。

扇動罪など複数の容疑で訴追

フェンスター記者はミャンマーで「フロンティア・ミャンマー」の編集幹部を務めるとともに記者として取材活動を続けていたが、2月1日の軍によるクーデター発生後は反軍政、民主政権回復の立場からの取材、報道を続けていた。

そして5月24日、家族に会う目的で米国へ向かうためヤンゴン国際空港でマレーシア・クアラルンプール行きの航空機に搭乗しようとしたところ治安当局によって身柄を拘束され、ヤンゴン市内の政治犯収容所でもあるインセイン刑務所に収監されていた。

フェンスター記者は「不正確な情報に基づく報道」などが国家の安全と治安を脅かすとして「扇動罪」に問われ、その他の入管法違反などと合わせて公判が開かれ11月12日に禁固11年の実刑判決を受けたばかりだった。

リチャードソン元大使のミャンマー訪問と前後して日本からのミャンマーと関係の深い団体幹部らもミャンマー入りしてミン・アウン・フライン国軍司令官と面会しており、一部報道ではこの面会の席で日本側がフェンスター記者ら身柄を拘束されている外国人の早期釈放を求めたことも今回の釈放につながったとの見方もでている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀、プライベート市場のストレステスト開始へ

ワールド

ウクライナ南部に夜間攻撃、数万人が電力・暖房なしの

ビジネス

中国の主要国有銀、元上昇を緩やかにするためドル買い

ビジネス

英建設業PMI、11月は39.4 20年5月以来の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 4
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中