最新記事

韓国

岸田新総裁選出、韓国メディアは一斉に日韓関係の改善を要望

2021年10月4日(月)17時00分
佐々木和義

河野氏の新首相就任を期待する声が広がった

自民党総裁選が、事実上、岸田文雄前政務調査会長と河野太郎前行政改革相の一騎討ちになると、韓国では河野氏の新首相就任を期待する声が広がった。

河野太郎氏は外相だった2019年7月19日、いわゆる徴用工訴訟をめぐって、日韓請求権協定に基づく仲裁委員会の設置に韓国政府が応じなかったことを受け、当時の南官杓(ナム・グァンピョ)駐日韓国大使を呼んで抗議を行った。南大使が日韓双方の歩み寄りを提案すると河野外相は「極めて無礼」と一喝した。2018年12月の韓国海軍によるレーダー照射事件にも厳しい姿勢で臨むなど、韓国に対して強硬な態度を示したが、外相だった河野氏は直接対話を行ってきた。また、いわゆる河野談話を発表した河野洋平元官房長官の子でもある。父親の談話をないがしろにはしないだろうと期待した。

一方、岸田文雄氏は、外相だった2015年12月、日韓慰安婦問題で合意した当事者で、文在寅大統領はその合意を破棄した。任期末が近づいた文大統領は21年1月の新年の辞で「慰安婦合意は有効」と言葉を変えたが、岸田首相の下での関係改善は遠いという見方が有力だ。

韓国は政権が変わると、方針や政策が大きく変わることが珍しくない。とりわけ、政権党が変わると前政権を否定する。たとえば、親日と目された朴槿恵前大統領は、就任当初は同じ保守政党の李明博元大統領の反日基調を踏襲し、政権後半になってから米国の要請も相まって日本に歩み寄った。

一方、左派政党の文在寅大統領は、朴槿恵前大統領を否定した。保守政権の基本である北朝鮮に対する強硬姿勢を転換し、朴政権が掲げた教育改革を廃止した。また、公約に掲げながら一度は引っ込めた朴政権時の日韓慰安婦合意破棄を強行した。

大統領制を採用し、大統領に権限が集中する韓国は、日本も韓国と同様、首相が変わると方針が大きく転換すると考える人が少なくない。菅義偉内閣が発足したとき、日韓関係の改善を期待したが、議院内閣制を採用する日本は首相が変わっても政策が大きく変わることはない。

韓国政府は対話を求め、メディアや財界は関係改善を求めるが、在韓日本人や日韓ビジネス従事者、日韓関係を注視する人の多くが、日韓関係は来年5月に新大統領が就任するまで変化はなく、以降の関係も次期大統領次第だと考えている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ノボノルディスク、不可欠でない職種で採用凍結 競争

ワールド

ウクライナ南部ガス施設に攻撃、冬に向けロシアがエネ

ワールド

習主席、チベット訪問 就任後2度目 記念行事出席へ

ワールド

パレスチナ国家承認、米国民の過半数が支持=ロイター
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 8
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 9
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 10
    習近平「失脚説」は本当なのか?──「2つのテスト」で…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中