最新記事

ミャンマー

ミャンマーに厳しい議長声明を発表 ASEAN首脳会議 、ミャンマーは異例の欠席

2021年10月27日(水)17時25分
大塚智彦
オンライン形式で開催されたASEAN首脳会議

オンライン形式で開催されたASEAN首脳会議。下段右から2番めのミャンマーの枠はずっと空席のままだった。Ain Bandial - REUTERS

<ミャンマー軍政の参加を拒否したASEAN。対話の扉は閉じられてはいないが......>

東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議が10月26日にオンラインで開催され、クーデターで民主政府から実権を奪取したミャンマー軍政に対し、市民への暴力や弾圧に懸念を表明するとともにASEAN特使の受け入れやアウン・サン・スー・チー氏らを含む全ての関係者との面会などを求める4月のASEAN臨時首脳会談で合意した「5項目合意」の履行を軍政に求める「議長声明」を発表した。

焦点となっていたミャンマーからの出席者は軍政トップのミン・アウン・フライン国軍司令官の参加がASEANによって「拒否」されたため、代理としてASEANが求めた「非政治的な人物」としてミャンマー外務省高官の出席が見込まれていたが、26日ミャンマーは同会議に代表者の指名を通告せず最終的に欠席となった。

前例のない加盟国の欠席

オンラインで開催された首脳会議の様子を伝える映像では、議長国ブルネイなど発言する各国首脳を中心にその周囲に加盟国首脳が並んだが、ミャンマーだけは画面に国名だけが表示されるという異例の会議となった。

首脳会議に限らずASEANの一連の会議に加盟国が欠席するのは前例がなく極めて異例で、首脳会議の冒頭で発言した議長国のブルネイやASEAN事務局はミャンマーの欠席に関して一切コメントはしなかった。

ミャンマー代表抜きで発表された議長声明では「死者や暴力が報告されており、情勢に懸念を抱いている」と現在のミャンマーの状況への懸念を改めて表明して軍政に事態改善を求めた。

そのうえで4月24日にインドネシアの首都ジャカルタで開催されたASEAN臨時首脳会議で「ミャンマーの首脳格」として出席したミン・アウン・フライン国軍司令官を含めて全ての参加加盟国が合意した「5項目合意」にある「国民の利益を最優先とし平和的な解決を目指して関係者全員で建設的な話し合いを行う」「ASEAN特使の派遣を受け入れ関係者全員と面会すること」の履行をミャンマーに強く迫る内容となっている。

ミャンマー軍政はこれまでASEANが8月に特使として任命した議長国ブルネイのエルワン・ユソフ第2外相の訪問は認めるものの、スー・チー氏やウィン・ミン大統領など民主政府の幹部との面会は「公判中の身である」ことを理由に一斉認めない立場を示し、ASEAN特使のミャンマー訪問はこれまで実現していない。

さらにASEANや国連、欧米諸国が求めている軍政による暴力の即時停止に関して軍政トップのミン・アウン・フライン国軍司令官は18日にテレビ演説して「暴力の悪化は軍に抵抗する勢力によるものであるのにそれを誰も止めようとしない」と反発していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、対日関税15%の大統領令 7日から69

ワールド

パナマ運河港湾、官民パートナーシップが引き継ぐ可能

ビジネス

アップル、7─9月売上高見通しが予想上回る 関税コ

ビジネス

完全失業率6月は2.5%で横ばい 有効求人倍率1.
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 10
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中