最新記事

カトリック教会

仏カトリック教会、小児性愛神父3000人の恥辱

Report Estimates French Catholic Church Employed 3,000 Pedophiles Since 1950s: 'Hideous'

2021年10月4日(月)16時07分
ナタリー・コラロッシ
ローマ教皇フランシスコ

ローマ教皇フランシスコは被害者より教会を守ろうとする隠蔽体質の改革に乗り出した Guglielmo Mangiapane -REUTERS

<独立委員会の調査で明らかになった過去70年間の小児性愛者によるおぞましい犯行を、教会も長い間、見て見ぬふりをしていた>

フランスの教会における性的虐待を調査する独立委員会は10月3日、1950年代以降に同国のカトリック教会内で、数千人に及ぶ聖職者が児童を性的に虐待していたことを明らかにした。

同委員会のジャンマルク・ソベ委員長は、過去70年間に教会のメンバーだった11万5000人の聖職者のうち、約3000人の小児性愛者を特定したことを発表。その3分の2は教区司祭だったとされる。

「歴史、社会学、医療、精神医学などさまざまな分野の視点を取り入れなくてはならない作業だった。児童保護、社会福祉、虐待といった分野の専門知識を動員し、また、神学と法律の専門の技能も必要だった」と、ソベは10月3日にCNNに語った。

委員会は2年半に渡ってフランスの教会内での性的虐待の調査を続け、10月5日の報告書で完全な調査結果を公表する予定だ。委員会は21人で構成され、2018年にフランス・カトリック教会によって虐待を調査するために設立された。

委員会の創設は「秘密とわれわれの社会のおぞましい側面」に対処するための重要なステップであり、報告書の作成には「膨大な量の作業」が必要だったとソベは語った。

「われわれは被害者たちと多くの時間を過ごした。すべての被害者の話を聞く仕事を既存の研究所に委ねることは避けた。もちろん、研究所も一部の聞き取り調査を担当したが、われわれは自ら多くの被害者の聞き取り調査を行った」と、ソベは言う。彼は性虐待被害者の数を明らかにしなかったが、5日の報告書には新たな統計が含まれると述べた。

40件以上が時効に

ジュルナル・デュ・ディマンシュ紙の取材に応じたソベは、今回の調査で1950年から70年にかけて虐待のレベルが特にひどかったことがわかったと述べた。

「1950年から70年にかけて、教会は被害者にまったく関心を示さなかった。子供たちが被った苦しみは無視された。その後は対応が変わった」とソベは同紙に語った。「私たちの目的は、あらゆる虐待に対して具体的な診断を提供し、原因を特定し、すべての結果を引き出すことだ」

フランスのカトリック教会は10月3日に公式ツイッターのアカウントに被害にあった人々のための祈りを投稿した。「主よ, わたしたちは 教会で暴力や性的暴行を受けたすべての人々をあなたに委ねます。裁判の時は、被害者がいつもあなたの支援とわれわれの支援を当てにしてくれますように」。

同教会は、完全な報告書が発行される日にも祈りを捧げるという。

ソベによれば、犯罪として訴追可能な性的虐待事件22件は、検察庁に送られた。時間が経ちすぎて犯罪として起訴することができない40以上の事件の情報は教会本部に送られたと、AP通信が報じた。

フランス司教会議は2019年に、同国の法律上の時効にかからない事件の被害者に金銭的補償を行うことに合意した。3日の時点では、これらのケースの何件が新しい報告書に含まれるか、補償のレベルがどの程度になるかは明らかにされていない。

ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、追加利下げ「緊急性なし」 これまでの緩和で

ワールド

ガザ飢きんは解消も、支援停止なら来春に再び危機=国

ワールド

ロシア中銀が0.5%利下げ、政策金利16% プーチ

ワールド

台北駅近くで無差別刺傷事件、3人死亡 容疑者は転落
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 10
    中国、ネット上の「敗北主義」を排除へ ――全国キャン…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中