最新記事

原発

中国で使用済み核燃料のガラス固化スタート、原発大国へ

China Turns Nuclear Waste Into Glass for First Time Using 2,000F Furnace

2021年9月14日(火)19時26分
エド・ブラウン
原発

原発は二酸化炭素を出さないが、使用済み燃料の処理が課題(写真はフランス) Stephane Mahe-REUTERS

<中国が政府目標の2060年カーボンニュートラルに向けて具体的な一歩>

原発大国の道を進み続ける中国が、放射性廃棄物をガラス固化して廃棄する施設を稼働させた。

この廃棄施設は9月11日、中国南東部の四川省広元市で稼働した。中国国営メディアの環球時報が、中国国家国防科技工業局の話として伝えた。

中国で初めて実施されたこの手法は、中国の原子力産業の大きな一歩をしるすものだと、同紙は続けた。

原子力発電所は温室効果ガスを排出しないという点で、クリーンエネルギーとされることもある。

問題は、原発が生み出す放射性廃棄物だ。長期間にわたって放射線を放出し続ける使用済み核燃料をいかに安全な方法で廃棄するかだ。

中国は、摂氏1100度前後の高温で、液状の放射性廃棄物とガラス原料を混ぜ合わせた。それが冷えると、放射性廃棄物はガラス内部に閉じ込められて、危険な放射能が漏れ出すのを防げる。

放射性廃棄物ガラス固化と呼ばれるこの技術を実用化したのは、中国が世界で最初ではない。アメリカ、フランス、ドイツなどの多くの国が、この方法で放射性廃棄物を廃棄している。

石炭依存から大転換?

たとえばイギリスは、英国放射性廃棄物インベントリ(UKRWI)のウェブサイトで独自のガラス固化プロセスについて説明している。溶けた放射性廃棄物に砕いたガラスを混ぜ、生成物をステンレススチール製のキャニスターと呼ぶ容器に流し込む。長期保管と廃棄に対応した容器で、1つあたり約150リットルの約放射性廃棄物を入れることができる。

環球時報によれば、中国では、ガラス固化された放射性廃棄物は、地下数百メートルの貯蔵場所に保管する予定だという。

中国国家原子能機構(CAEA)の劉永徳チーフエンジニアは環球時報に対し、使用済み燃料の処理法確立により、中国が世界に約束した2060年カーボンニュートラル(脱炭素)目標達成を加速させるだろうと言った。

これまで電力の大半を石炭火力に依存してきた中国は、温室効果ガスの巨大排出源として批判を浴びてきた。それを原発で置き換えようというわけだ。

世界原子力協会(WNA)によれば、中国は、原子炉の設計と建設をほぼ国産化しており、現在稼働中原子炉51基に加え、さらに18基を建設中だという。

運転中の原子炉の数では、アメリカとフランスに次ぐ世界3位になる、とフォーブスは伝えてい。

(翻訳:ガリレオ)

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:現実路線に転じる英右派「リフォームUK」

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中