最新記事

中国

日本の自民党次期総裁候補を中国はどう見ているか?

2021年9月9日(木)12時44分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

●それでも日本は、アメリカに原爆を落とされた恨みや米軍に占領された屈辱さえも乗り越えて今日に至っている。したがって、おそらく中国が唐の時代のように日本を全面的にリードするようにならない限り、日本は中国に「服従」しないし、「相互尊重」には至らないだろう。日本が中国に「もまれる」のは、まだまだ先のことだ。

●しかし、日本はもはや中国に対して根本的な脅威を与えることはできなくなっていることを自覚すべきだ。日中の経済・貿易協力の額は相当なものであり、これは日中関係の最も実質的な要素と見るべきである。 日本の次期首相が誰であろうと、日本の中国に対する主張がより強くなるかどうかにかかわらず、日中両国の経済・貿易関係の互恵性と規模が影響を受けることはないだろう。

●結論的に言って、次期首相が誰になろうと、中国は日本よりも強くなっているし、日中関係が悪化して被害を受けるのは間違いなく日本であることに変わりはない。

引用が長くなったが、これが中国の、日本に対する根本姿勢なので、できるだけ省略せずにご紹介した。ここで注目すべきは、中国は自民党総裁が次期首相になると考えていることで、野党が来たるべき衆院選で政権を交代させるという可能性は想定していないようだ。

高市早苗候補に対する酷評

次に注目すべきは、高市早苗議員に対する酷評である。9月6日の時点では、まだ立候補の意向を表明しただけで、推薦人20人を集めて立候補を宣言したのは、この原稿を書いている9月8日だ。

それでも6日の時点で環球網は日本人からすると度肝を抜かれるような表現を用いて高市議員を酷評している。文字化するのが憚れるが、これは環球網が書いていることなので、客観的に勇気を出して、そのまま以下に書くことをお許し願いたい。

9月6日の環球網は<政治狂人!日本新首相"本命 "の一人、高市早苗は靖国神社「参拝」継続を示唆>という論評を発表した。

この「狂人」という言葉が、「クレイジーなほどの政治好き」という意味合いであればいいと思って熟読してみたが、残念ながら本当に「この人は狂っている」というトーンで書かれているのに驚いた。それに伴って、中国のネットでは「高市」と「狂人」がペアで数多く溢れていることにも驚かされる。

環球網の報道によれば、概ね以下のようなことを言っている。( )は筆者。

●日本のメディアによると、彼女が成功すれば、日本初の女性総理大臣になる可能性がある。産経新聞によると、高市氏は金曜日(9月3日)、「日本人として、信教の自由に基づき、立場に関係なく参拝を続けることは絶対に外交問題ではない」と主張し、「首相になっても靖国神社への参拝を続けることを示唆した」という。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB、政策の柔軟性維持すべき 不確実性高い=独連

ワールド

韓国、対米通商交渉で作業部会立ち上げ 戦略立案へ

ビジネス

日経平均は反発、円安を好感 半導体株高も支え

ビジネス

村田製作所、マイクロ一次電池事業をマクセルに80億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中