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アフガン情勢

米国行き望むアフガニスタン避難民 数万人が第3国で足止めのまま

2021年9月6日(月)10時51分

米当局者らは今週2人の指紋を採ったが、いつ米国行きの便に乗れるかについて、新たな情報は与えてくれなかった。通訳その他で米国に協力した人に付与される「特別移民査証(ビザ)=SIV」の申請もしていない。

ビザを持たない避難者の中には、緊急の人道的理由で一時的に米国入りを認められた者もいる。これは従来の難民制度に則った措置ではない。

審査に時間

ホワイトハウス高官によると、米国は入国を望む避難者を審査するため、海外基地の人員を増強している。

しかし、難民支援団体や移民関連の弁護士、アフガン人などに取材したところ、避難者の一部はいつまで外国の地で待たなければならないのか、いまだに分からない状態だ。

移民支援団体は以前から、SIVの申請手続きの遅さを批判してきた。何年間も未解決のままになっている請願も多いという。

支援団体によると、米国はアハマドさんのようにビザを申請していない人について、身分証明書を持たずに国境を越えてくる難民や、亡命希望者を審査した経験を参考にできるはずだ。

多くのアフガン人は過去何年もの間に、米政府当局、もしくは米国と情報を共有するアフガン当局によって指紋と写真を採取されている。

軍事・移民専門家のマーガレット・ストック氏は「米国は人々の身元を割り出すことが可能だが、それには時間と資源を要する。米政府はわざわざ人々を助けようとするだろうか、それとも自分で耐えがたい重荷を負うよう強いるだろうか」と語った。

政府の目が届かない避難者も

海外の米軍基地で待機する人々以外に、非営利団体や企業、退役軍人の組織など民間が緊急で手配した便で国外退避したアフガン人も数千人に上る。

そうした支援に携わっている元ホワイトハウス高官のスティーブ・ミスカ氏は「わが国の目が届いているかが定かでない部類の避難者がいる」と説明。こうした人々は米国への入国申請に苦労する可能性があり、非常に心配だという。

事情に詳しい外交官によると、米国の非営利団体がチャーターした便により、約3500人のアフガン人がアラブ首長国連邦(UAE)に退避した。米政府は政府の便でUAEに退避させた約4000人を優先的に扱うため、これらの人々全員の手続きが終わるまでには数カ月を要する見通しだという。

米国に退避することができたアフガン人の中には、もっと多くの親類を一緒に連れて来られたのではないかと苦脳する人もいる。今はシアトルにいるジアさんの妻、タヘラさんは「強い罪悪感を覚える。彼らを脱出させられていれば、と思って」と語った。

(Kristina Cooke記者、Mica Rosenberg記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

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