最新記事

東京五輪

五輪を走ったアフガン難民の女子選手「日本映画で強い女性になることを夢見た」

2021年7月30日(金)10時40分
東京五輪に難民選手団として参加したマソマハ・アリザダ選手

イスラム系シーア派の少数民族ハザラ系のアリザダは、1996年にアフガニスタンで生まれた。難民選手団の1人として東京五輪に参加し、自転車タイムトライアルに出場した。7月28日、静岡県小山町で撮影(2021年 ロイター/Christian Hartmann)

東京五輪の女子自転車タイムトライアルが行われた28日、最下位にもかかわらず多くの記者の注目を集める選手がいた。「さまざまな理由で国を離れることを余儀なくされている8200万人の人々に、希望と平和のメッセージを送るため私はここにいる」──難民選手団の1人、マソマハ・アリザダ(25)はレース直後に記者たちにそう語った。

イスラム系シーア派の少数民族ハザラ系のアリザダは、1996年にアフガニスタンで生まれた。タリバンが権力を掌握する不安定な政治情勢の下、隣国イランに移り住み、10歳で一度カブールに戻った。「難民チームを、そして女性の権利を代表してここに立てることをうれしく思う」と話すアリザダは、難民として認められたフランスで暮らしている。

イランにいたころ、アリザダが夢中になって見ていたのが日本の映画だ。タイトルは覚えていないというが、女性が1人で屈強な男性たちに立ち向かっていく姿に魅了された。「私の国や私の育った文化では、女性は常に取るに足らないものとされていた。当時は自分の置かれていた状況と映画の中と、どちらが現実であるか理解できなかった」と、アリザダはロイターとのインタビューで語った。

あの映画の女性のように強くなりたいと思った彼女は、テコンドーやバスケットボールをはじめ、複数のスポーツに挑戦した。そして自身の才能を発揮できると行き着いたのが自転車だった。

しかし、アフガニスタンではつらい経験をした。女性が自転車に乗ることは「異常」だとみなされ、心無い言葉で嘲笑や非難をされただけでなく、石を投げられたり、見知らぬ人にすれ違いざまに殴られたりもした。「彼らが女性にして欲しくないことを私がしていたから」と、アリザダは振り返る。自身を取り巻く環境への疑問は日に日に大きくなっていった。誰にでも自分がしたいことをする権利はあるはずだ、と。

一番の理解者となってくれたのは父親だった。自分がやりたいと思ったことがあるのなら最後まで諦めずに頑張れと今も励まし続けてくれる父。アリザダは試合後、記者団の取材の中で何度も感謝の言葉を口にした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パキスタン首相、米主導「平和評議会」初の首脳会合に

ワールド

ベネズエラ暫定大統領、米から招待と発言=報道

ワールド

トランプ米政権、帰化者の市民権剥奪へ取り組み拡大=

ワールド

ミネソタ州への移民対策職員増派が終了へ、トランプ氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の定説に挑む、3人の日本人科学者と外科医
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 5
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 6
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    エプスタイン疑惑の深層に横たわる2つの問題
  • 10
    台湾侵攻を控えるにもかかわらず軍幹部を粛清...世界…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中