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ドキュメント 癌からの生還

東大病院の癌治療から逃げ出した記者が元主治医に聞く、「なぜ医師は患者に説明しないのか」

2021年7月20日(火)07時00分
金田信一郎(ジャーナリスト)

本人がそのつもりでも、家族が「おじいちゃんはもう88歳なんだから、手術はやめた方が楽なんじゃないのか」と言うかもしれません。家族で話し合って、「放射線はどうですか」と聞かれて、放射線科を紹介することもあります。ただその時にも、「放射線治療も、みなさんが思うほどラクではありません」という話もしています。

つまり私たち医師はまず、社会背景や年齢などは無視して、治療方針を考えないといけないのです。それを提示した上で、そこから先は患者さんと相談して決めていくのです。

──それについて、意見を言ってくる患者は少なくないですか。

そんなにはいません。

──(治療を)提示されたら、基本的にそれでいく。

もちろん中には、「あの時は頭が真っ白になっていたので、もう1回話を聞きたい」とか「ちょっと1時間、考える時間をください」という人もいます。

──その場で1時間で決めるんですか。早いですね。

ただ、癌だと診断されたら、どちらかというとみなさん、早く治療を受けたがります。

──時間をかけたくないと。

「先生、来週手術してくれませんか」「いやいや、来週はもう埋まっていますから、早くても来月後半になりますよ」と答えるケースの方が多いのです。患者さんは、「そんなに時間をあけていいんですか」と驚かれますね。

──「考えたい」という人よりも、「早く手術をしてほしい」という人の方が多いのですね。

比率としてはそちらのほうが絶対に多いですね。「少しでも早く」という気持ちも理解できます。

──貴重なお話をありがとうございました。

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