最新記事

中国外交

EUにも嫌われ始めた中国の戦狼自滅外交

China's 'Tone-Deaf' Diplomacy Hardens Attitudes in Europe, Brussels Expert Says

2021年7月5日(月)18時38分
ジョン・フェン

「クイーン・エリザベスの派遣が額面通り、つまりあらゆる国が調印した国連の原則を守るための国際的な努力であり、この地域における親善関係を築く手段であると受け取られることを期待する」とトゥゲンハートは述べた。

ドミニク・ラーブ英外相も、中国政府による香港の民主的権利が弾圧されていることへの懸念を表明している。だがボリス・ジョンソン首相率いる内閣のそれ以外の閣僚たちは今も、中国市場がもたらす貿易機会のことが気になるらしい。

例えばリシ・スナーク財務相は1日、新疆ウイグル自治区における人権侵害を批判する一方で、イギリスは中国との経済関係構築を続けるべきだと訴えた。

英中関係の「黄金期」は幻だった

ジョンソン政権はデービッド・キャメロン前政権下における英中関係の「黄金期」をある程度まで再現したいと考えているのではとの見方もある。もっともロンドン大学東洋アフリカ学院・中国研究所のスティーブ・ツァン所長は、そんな黄金期など「実際には存在したことがない」と言う。あくまでも対中関係改善のための「美辞麗句」だったというのだ。

中国政府がイギリスの意向を無視し、英中共同宣言が定めた義務を放棄し、香港や(のちには新疆ウイグル自治区において)「やりたい放題やる」ことを決めたことが明らかになった際、イギリス政府は黄金期を謳い続けることの「持続不可能な性質」を理解したとツァンは言う。

中国政府の態度はとげとげしさを増しているものの、ツァンに言わせれば、イギリスに対する外交政策に根本的な変化はない。変わったのは、中国の政策に対するイギリス側の受け止め方と理解だと彼は言う。

ツァンはこう締めくくった。「習は最近、外の世界からもっと愛される中国を目指すとアピールしているが、それでも彼の外交政策は転換を目指してはいない。中国のやり方を修正しようという呼びかけであって、外交政策を変えようというのではない」

ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

サウジ原油輸出、6月急増し1年超ぶり高水準 供給途

ワールド

ダライ・ラマ、「輪廻転生」制度を存続 後継選定で中

ワールド

豪小売売上高、5月は前月比0.2%増と低調 8日の

ビジネス

豪カンタス航空、600万人分の顧客データベースにサ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 8
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中