最新記事

核ミサイル

中国でまた核ミサイル発射施設110基を発見──冷戦以来「最も大規模な」軍備増強

China Spotted Building 110 Secret Nuclear Missile Silos in Desert

2021年7月29日(木)12時10分
ジョン・フェン

「これらのサイロすべてに(核ミサイルが)配備されるのかどうかについては、現時点では不明だ」と、FASでプロジェクトの責任者を務めるクリステンセンは言う。「これは見掛だけの『シェルゲーム』だという仮説を唱えるアナリストもいるし、これらのサイロが最終的にすべていっぱいになると考えている者もいる。私たちが話をした政府関係者たちも、そういう意見だ」と、クリステンセンは本誌に対して語った。

クリステンセンの言う「シェルゲーム」とは、冷戦期にアメリカが採用した戦術だ。当時アメリカは、核兵器を多数のサイロ間で頻繁に移動させた。兵器の本当の配備先や、同国の核攻撃能力の実態を曖昧にするためだった。

silos4.jpeg
PLANET LABS INC./NEWSWEEK

中国の人民解放軍ロケット軍は数十年前から、核弾頭の搭載が可能なICBM「DF-5」用のサイロ20基を運用してきた。トラック搭載型のICBM発射装置も約100基保有している。

2つの施設が完成すれば、新たに250基のサイロが加わることになり、これにより中国はサイロ配備型ICBMの数でロシアを追い抜き、アメリカの半分に迫る、とレポートは記している。

中国が現時点で保有する核弾頭の数は約350基だと、FASは推定する。2020年9月時点での米国防総省の報告書ではその数を「200基を上回る」とし、今後10年間に倍増するとの見方を示していた。

「確かに大きな動きではあるが、これだけの軍備拡大をもってしても、中国は核軍備の規模でロシアやアメリカに肉薄するまでには至らない」と、コーダとクリステンセンは記した。

nuclearchart.jpeg


新設される数百基の核ミサイルサイロを中国がどう運用するのか、詳しい計画はわかっていない。クリステンセンは文書による回答でこう指摘した。「こうした大規模な建設計画の裏には複数の動機があるだろう。核戦争でのICBMの生存率を向上させたいというのがその1つ。また、世界における中国の地位をさらに強化するための軍備増強という側面もある」

中国政府は、表向きは最低限の核抑止力だけを保持し、核の先制使用はしないとの原則を掲げている。だが今回のレポートは、アメリカ、ロシア、インドとの軍備競争に直面して核増強をせざるをえない中国の安全保障上のジレンマを浮き彫りにしている。

コーダとクリステンセンは以下のように述べる。「このサイロ建設は、軍事的な緊張をさらに深刻化させ、中国の意図をめぐる懸念を増大させるだろう。軍備の縮小や制限は夢物語だという議論が勢いを増し、米ロの核軍縮も止まり、むしろ中国の核軍拡を踏まえた上で調整が必要だとの主張も出てくるだろう」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

UPS機が離陸後墜落、米ケンタッキー州 負傷者の情

ワールド

政策金利は「過度に制約的」、中銀は利下げ迫られる=

ビジネス

10月の米自動車販売は減少、EV補助金打ち切りで=

ワールド

ブリュッセル空港がドローン目撃で閉鎖、週末の空軍基
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中