最新記事

人種差別

ファッション界の「中東紛争」がZARAの不買運動に発展

Zara Head Designer Spars With Palestinian Model, Sparks Boycott Calls

2021年6月16日(水)17時46分
エマ・メイヤー
ニューヨークのZARA

ニューヨークのZARA Caitlin Ochs.-REUTERS

<ユダヤ人デザイナーがパレスチナ人モデルに送った差別的なメッセージが明らかになり、デザイナーは子供の殺害予告を受け取り解雇の危機に。一人の社員が放った憎悪によって、ZARAも行動を迫られている>

スペインの大手ファッションブランド、ザラ(ZARA)をボイコットしようという呼びかけが、ソーシャルメディアで広がっている。そのきっかけは、パレスチナ人のモデルが、パレスチナを支持する自身のインスタグラム投稿に対して、同ブランドのデザイナーが反パレスチナのメッセージ返してきたことだった。

この男性モデル、カヘル・ハラハシはインスタグラムで、差別的なダイレクトメッセージを受け取ったと主張している。ハラハシによれば、このメッセージの送信者はザラ婦人服部門のチーフデザイナー、ヴァネッサ・ペリルマンで、その内容は、イスラエルとパレスチナの紛争に関連するものだったという。

ペリルマンは、以下のように書いたと伝えられている。「もしあなたたちに教育があれば、イスラエルの援助で建てたガザ地区の病院や学校を爆破するようなことはしなかったのよ」

そして、こう付け加えたという。「あなたがモデルの仕事をしているのも変な話。イスラム教では偶像崇拝は禁止でしょ。それにもしあなたが同性愛を公表したとしたら、石打ち刑になるのよね」

後悔は後の祭り

ハラハシが、ペリルマンとのインスタグラム上でのやりとりを記録したスクリーンショットを投稿すると、ソーシャルメディアユーザーの間ではたちまち、「BoycottZara(ザラをボイコットせよ)」「ZaraMustApologize(ザラは謝罪すべき)」というハッシュタグが拡散し、Zaraはイスラム嫌悪だとして非難する動きが始まった。

ハラハシは、ペリルマンとのその後のやりとりのスクリーンショットも公開した。ペリルマンは仕事を失いそうになり、自分の子供たちも危険だと感じるようになった後に謝罪した。

ペリルマンはハラハシに、「なぜ、私と私の仕事にかかわる投稿をしたの?」と、テキストメッセージを送ったという。「気味が悪い。今届いたアラビア語のメッセージには、私の居所を突き止めて子どもたちを殺すと書かれている」

ペリルマンはこう続けた。「職場では、意地悪な人がとても多くて、ユダヤ人について心ない暴言が飛び交っている。それで私もつい八つ当たりをしてしまった。本当に後悔している」

ペリルマンは、「後悔している」「これは本当の私じゃない」と何度も繰り返した。

ハラハシへの最後のメッセージで、ペリルマンは以下のように述べた。「私についての投稿をインスタグラムに載せたままにするというのなら、それもあなたの権利だ。でも、今この時にも、私のところには子どもを殺すという内容の脅迫が届いていることを知ってほしい」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

マクロスコープ:高市氏が予算案で講じた「会計操作」

ワールド

中国、改正対外貿易法承認 貿易戦争への対抗能力強化

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平の進展期待 ゼレンスキー

ワールド

中国外相、タイ・カンボジア停戦を評価 相互信頼再構
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中