最新記事

感染症対策

WHO、イタリアでのコロナ初感染時期について再検査

2021年6月2日(水)07時43分
ジュネーブのWHO本部

新型コロナウイルスが2019年10月までに中国国外で循環していた可能性を示す研究に使われたサンプルが、世界保健機関(WHO)の要請で再び検査されたことが、イタリアで研究論文を担当した2人の科学者の話で分かった。写真は2020年6月、ジュネーブのWHO本部で(2021年 ロイター/Denis Balibouse)

新型コロナウイルスが2019年10月までに中国国外で循環していた可能性を示す研究に使われたサンプルが、世界保健機関(WHO)の要請で再び検査された。イタリアで研究論文を担当した2人の科学者が明らかにした。

新型コロナは19年12月に中国中部の武漢市で特定された。イタリアで最初の感染者は、20年2月21日にミラノ近くの小都市で確認された。

これに対し、昨年発表された研究によると、イタリアで19年に新型コロナか変異株の抗体が確認された。

研究を受け、中国の国営メディアは新型コロナの発祥地が中国でなかった可能性があると報じた。イタリアの研究者は、新型コロナが最初に発症した場所ではなく時期に疑問を投げかける研究結果であると主張した。

イタリアの国立がん研究所(INT)の科学部門のディレクターを務める共同執筆者のジョバンニ・アポロネ氏は「WHOが研究に使った生物材料を共有し、独立した研究所で再び検査をできるかと尋ねてきたため、許諾した」と述べた。

WHOの要請はこれまでに報じられていなかった。

WHOの報道官は「元の研究にかかわった研究者と連絡を取っている。さらなる検査のために提携研究所と協力した」と述べた。またWHOは研究を執筆した、または新型コロナ検査で陽性が出たと報告された19年に収集したサンプルに関する情報提供者全員に連絡を取ったと説明した。ただ、まだ結論は出ていないという。

アポロネ氏はロイターに対して「これまでに公表された研究は、どれも発祥地に疑問を投げ掛けるものではない」と語った。

研究論文の共同執筆者で、シエナ大学の公衆衛生教授のエマニュエル・モントモリ氏は、WHOが再検査する施設としてオランダのロッテルダムにあるエラスムス大学の研究所を選んだと明らかにした。エラスムス大学はコメントの要請に応じなかった。

モントモリ氏は「エラスムス大学はわれわれのサンプルを市販用検査機で再検査した。市販用はわれわれが考案し、検査した方法よりずっと反応が鈍い」と話した。アポロネ氏とモントモリ氏は、検査方法が違っても、2月下旬に報告された再検査の結果に満足していると話した。さらに、イタリアとオランダの研究者ら研究結果を公表するまでさらなるコメントを控えるとした。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア高官、ルーブル高が及ぼす影響や課題を警告

ワールド

ゼレンスキー氏、和平協議「幾分楽観視」 容易な決断

ワールド

プーチン大統領、経済の一部セクター減産に不満 均衡

ワールド

プーチン氏、米特使と和平案巡り会談 欧州に「戦う準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 3
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止まらない
  • 4
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 5
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 6
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 9
    【香港高層ビル火災】脱出は至難の技、避難経路を階…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中