最新記事

人権問題

ワクチン接種進む欧州で高まる同調圧力 拒否した者が解雇される事例も

2021年6月15日(火)21時35分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)
新型コロナウイルスのワクチン接種のデジタル証明書アプリ

ワクチン接種が普及しだしたスイスではワクチン接種のデジタル証明書アプリも配布されている REUTERS/Denis Balibouse

<個人主義や人権意識の高いはずの欧州で、自らの体について自己決定権が奪われかねない事態が起きている>

スイスでは新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、6月初旬の時点で、全国で2回接種完了した人は26%、1回終了した人は42%に達した。スイス最大の都市チューリヒのあるチューリヒ州では、16歳以上の接種予約が5月初旬に開始になり、7月からの学校の夏休みを前に接種を急速に進めようという意図がうかがえる。

一方で、スイスでもすぐに接種はしない、または接種は拒否すると決めている人がいる。そんな考えの介護職の女性が、接種しないことを理由に勤務先から解雇された。

しっかりと働いていたのに、解雇

6月のフリーペーパーのツヴァンツィヒミヌーテンの報道によると、ローザ・フォンターナさん(49歳)は、介護アシスタントとして、スイス・ルツェルン州の4つ星クアホテルに9年間勤務していた。ある日、上司から新型コロナウイルス予防接種を受けるよう強く求める手紙が送られてきたが、個人的な理由で拒否したという。その後、電話があり、接種することをもう1度よく考えるよう言われた。

フォンターナさんは了解し「もう1回熟慮します」と答えた。すると、また手紙が届いた。「予防接種を受けたいか」という質問に「はい」という項目だけがあり、それにチェックを書き込むという内容だった。

その手紙をそのままにしておいたところ、2月下旬に解雇を言い渡された。フォンターナさんは、自分は良い従業員だったのにと怒りがこみ上げるとともに、がっかりしたという。

ホテルは、フォンターナさんに解雇後の半年間は給与を払い続ける義務があったらしい。しかし、フォンターナさんは弁護士に依頼する費用を使いたくなかったし、また新しい仕事が見つかったため、ホテルを訴えることは止めた。

フォンターナさんによると、ほかに2人が同じ理由で解雇されたといい、同紙は、その2人のコメントも公開している。1人は理学療法士で「予防接種を受けたくないと言ったので、私も解雇されたのです」と話し、もう1人は「解雇の理由は予防接種です。接種を受けない人を働かせておきたくないと言われました。だから、私は荷物をまとめて去らなくてはならなかったのです」と語っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米テキサス空港の発着禁止解除、対無人機システム巡る

ビジネス

26年度の米財政赤字は1.853兆ドルに拡大の見通

ワールド

ロシア、米主導「平和評議会」初の首脳会合に不参加=

ビジネス

FRBの利下げ観測後退、堅調な雇用統計受け 4月ま
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    一体なぜ? 中国でハリー・ポッターの「あの悪役」が…
  • 6
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 7
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 8
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 9
    まさに「灯台下暗し」...九州大学の研究チームが「大…
  • 10
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中