最新記事

中国

習近平の「愛される国」外交指示を解剖する

2021年6月4日(金)14時34分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
習近平

習近平・中共中央総書記 Carlos Garcia Rawlins-REUTERS

5月31日、習近平は中共中央政治局の学習会で「愛される国」になる外交を展開せよと強調した。これを中国が外交方針を変えるシグナルかと受け止める向きもあるが、そのような甘い夢は抱かない方がいい。 

習近平、「信頼され、愛され、尊敬される中国の印象」を形成せよ!

習近平が中国を「愛される国になるために」外交方針を展開せよと言ったということが注目されているが、いかなる文脈の中で言ったのかを詳細に把握しないと、その意図を正確に分析することは出来ない。そこで、何を言ったのかを詳細に見てみよう。

5月31日午後、習近平総書記は中共中央政治局・第30回集団学習会を開催し以下のような骨子の講話を行った。

●中国の故事をうまく伝えて、中国の声を広め、真の、立体的で包括的な中国を提示することは、中国の国際的な伝播能力を強化するための重要な任務だ。

●わが党は建党以来、対外的伝播工作を重要視してきた。第18回党大会以来、わが党は国際的な世論誘導と世論闘争を効果的に行い、対外的大宣伝体制を構築することに務め、中国の国際的な言論と影響力を大幅に高めてきた。しかし同時に新たな状況と課題にも直面している。わが国の発言権と影響力を高め、国際世論への誘導力を高める努力が必要である。

●中国共産党が真に中国人民の幸福のために努力していることを外国人に理解してもらい、なぜ中国共産党が有能なのか、なぜマルクス主義が機能するのか、なぜ中国の特色ある社会主義が良いのかを理解してもらうために、中国共産党の宣伝能力を強化しなければならない。

●中国文化や中国文学を用いて世界に中国共産党の良さを浸透させ、中国に対して友好的な人々を増やしていかなければならない。

●開放的で自信に満ち、控えめで謙虚で、「可信、可愛、可敬」な(信頼され、愛され、敬愛される)中国の心象を創り上げていかなければならない。

●わが国が日々、世界の舞台の中心に躍り出ていること、世界の業務の中で大きな役割を果たし全人類の問題解決のために大きく貢献していることを全世界に知らしめなければならない。

●人類運命共同体の御旗を高く掲げ、多国間主義を唱え、一国主義・覇権主義に反対し、国際新秩序を形成すべく国際社会を導いていく。中国の発展そのものが世界に最大の貢献を果たし、人類の問題解決に知恵を与えることを宣伝していかなければならない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸

ビジネス

日銀、政策金利を現状維持:識者はこうみる

ワールド

韓国最高裁、李在明氏の無罪判決破棄 大統領選出馬資

ワールド

マスク氏、FRBへDOGEチーム派遣を検討=報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中