最新記事

米中関係

中国の台湾侵攻は起こりえない──ではバイデン強硬姿勢の真意は?

Don’t Hype Invasion Fears

2021年6月3日(木)20時34分
アミタイ・エツィオーニ(ジョージ・ワシントン大学教授)

210608P35_TWN_02.jpg

中国のアモイを対岸に臨む金門県に置かれている台湾軍兵士の模型 TYRONE SIUーREUTERS

「バイデン大統領は、米経済を立て直すという自身の大きな構想を、中国との長期的な競争に生き残るために必要な措置だと正当化してきた」と、ニューヨーク・タイムズ紙のデービッド・サンガー記者は指摘する。「この競争でアメリカは、民主国家は約束を必ず実現し、専制主義国として世界一成功している中国に今後も先を越されることはなく、革新性でも生産性でも負けないことを証明しなくてはならない。バイデンがこうした主張をするのは、政権が提唱するインフラと経済の再建計画に党派を超えた支持を得たいためだ」

「共和党の一部の賛同も得られそうな抜け目ない主張だ」と、保守系シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所のコリー・シャキーは指摘する。この試みはオバマ政権時代より効果がありそうだと彼女はみるが、それは「中国の行動が国内では抑圧的になり、対外的には攻撃的になってきているためだ」という。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙は4月半ばの記事に、「中国への対抗意識から民主・共和両党がテック部門への支出で連携」という見出しを付けた。

記事は次のような文章で始まる。「全米科学財団の役割を拡大する法案は超党派の支持を得ており、成立すればテック関連部門に最大2000億ドルの研究資金が提供される。法案支持派は、中国の増大する脅威に対抗するには成立が必要だとしている」

国家間の緊張が高まったとき、当事者の国々は「どこまでやる覚悟なのか」を、特に「相手の感情を最も刺激する点を突くかどうか」を決断する必要がある。中国の感情を最も刺激するのは、自国領土の一部と見なす台湾の問題だ。

これまで米中間には、アメリカは台湾を独立国家と認めず、中国は武力による台湾再併合を行わないという暗黙の了解があった。これは1971年にヘンリー・キッシンジャー大統領補佐官が北京を極秘訪問したことから成立した合意だ。

このときキッシンジャーは、中国側にさまざまな要求を行った。だが中国の周恩来首相が抱いていた懸念はただ1つ、台湾問題だけだった。キッシンジャーは、アメリカが「北京政府を唯一、正当な中国と認める」ことに合意した。

しかしバイデンの大統領就任式には、台湾の駐米代表が招待された。4月には非公式の高官代表団が、バイデンの「個人的な(支持の)メッセージ」として、台湾に送られている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独VW、中国合弁工場閉鎖へ 生産すでに停止=独紙

ビジネス

ECB、ディスインフレ傾向強まれば金融緩和継続を=

ワールド

米中外相がマレーシアで会談、対面での初協議

ワールド

米政府、大規模人員削減加速へ 最高裁の判断受け=関
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 9
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 10
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中