最新記事

ハッカー攻撃

ランサムウェア攻撃に対し身代金を払った企業の8割はまた襲われる

Most Businesses That Pay Off After Ransomware Hack Hit With Second Attack: Study

2021年6月24日(木)19時13分
レベッカ・クラッパー
ランサムウェアのイメージ

襲われたら最後、ロクなことにならないランサムウェア style-photography-iStock

<会社の重要なデータを人質に獲るランサムウェア。 一度身代金を払うとまた襲われる確率が高くなるうえ、データが完全に戻るとは限らず、4社に1社は廃業すにいたるという報告書が出た>

ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)によるサイバー攻撃を受け、システム復旧のために身代金を支払った組織の大半が、再び攻撃を受けている――サイバーセキュリティ会社「サイバーリーズン」が6月16日、こんな調査結果を発表した。

同社は、世界各国の1300人近いセキュリティ担当者を対象に調査を実施。その結果、ランサムウェアによる攻撃を受けて身代金を支払った組織の80%が、2回目の攻撃を受けていたことが分かった。このうち46%が、1回目と同じ犯罪組織からの攻撃とみられる。

ランサムウェア攻撃の影響は深刻だ。調査会社のセンサスワイドがサイバーリーズンの委託を受けて実施したこの調査によれば、ランサムウェア攻撃を受けた組織の25%がその後、廃業に追い込まれており、29%が人員削減を余儀なくされた。

サイバーリーズンのリオ・ディブ最高経営責任者(CEO)は、身代金を支払ってもデータを完全に復元させられる保証はないし、将来の攻撃から組織を守ることができる訳でもないと、次のように警告した。

「要求された身代金を支払っても、データを完全に復元させられる保証はないし、攻撃者が再びその企業を狙うのを阻止できる訳でもない。結局は、攻撃者を強気にさせて問題を悪化させるだけだ」

被害額は前年比225%増

システム復旧のために身代金を支払った組織のうち46%は、データに再びアクセスできるようになったものの、その一部または全部が破損していたと回答。データを完全に復元できたと回答したのは51%で、身代金を支払ってもデータにまったくアクセスできなかったと回答したのは全体の3%だった。

サイバーリーズンの調査は、2021年のランサムウェア攻撃の被害額は、世界全体で200億ドルに達する見通しだとしている。また米FBIが毎年発表している犯罪報告書によれば、アメリカでは2020年、ランサムウェア攻撃の被害総額が前年比で225%以上増加。サイバー犯罪の被害報告は、前年比で69%増えたという。

2020年にサイバー攻撃が増えた大きな理由は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により、テクノロジーの利用が増えたことだとみられている。

FBIのポール・アバテ副長官は報告書の中で、「アメリカの市民は2020年、世界的なパンデミックから家族を守り、困っている人々を手助けすることに集中していた。サイバー犯罪者たちは、人々がテクノロジーに頼っていたこの状況を利用して、次々とインターネット犯罪を重ねていった」と指摘した。

「これらの犯罪者たちは無防備なアメリカ市民を狙い、フィッシングやなりすまし、恐喝などさなざまなネット詐欺をはたらいた」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア決算に注目、AI業界の試金石に=今週の

ビジネス

FRB、9月利下げ判断にさらなるデータ必要=セント

ワールド

米、シカゴへ州兵数千人9月動員も 国防総省が計画策

ワールド

ロシア・クルスク原発で一時火災、ウクライナ無人機攻
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋肉は「神経の従者」だった
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 4
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 5
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 6
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    株価12倍の大勝利...「祖父の七光り」ではなかった、…
  • 9
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 8
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 9
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 10
    3本足の「親友」を優しく見守る姿が泣ける!ラブラ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中