最新記事

中国

100年前の建党時から中国共産党に貢献してきた日本

2021年6月24日(木)12時49分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

「自由で開かれたインド太平洋戦略」を「自由で開かれたインド太平洋構想」にし、さらに「戦略」も「構想」も習近平への忖度のために削除して、ただ単なる「自由で開かれたインド太平洋」という「地域名」にしていることが象徴しているように、今もなお日本の、中国への「貢献」はやんでいない。

対中ODA支援は最終的に今年度末に終わる

そもそも、日本が天安門事件によって崩壊寸前の中国共産党による一党支配体制を支援したために中国が今日の経済大国に成長し、そのために膨大な軍事費を注いで中国の軍事力を高めることにつながっている。

だというのに、その結果、2010年にはGDPの絶対値が日本よりも大きくなったというのに、2018年まで新規ODA(=日本国民の血税!)を停止しなかったとは何ごとか!

外務省のHPには「2006年の一般無償資金協力終了及び2007年の円借款の新規供与終了以降,日本国民の生活に直接影響する越境公害,感染症等協力の必要性が真に認められる分野における技術協力,草の根・人間の安全保障無償資金協力などのごく限られたものを実施してきた」が、「2018年10月、対中ODAの新規採用を終了させる」こととなり、「すでに採択済の複数年度の継続案件については,2021年度末をもって全て終了する」と書いてある。

つまり今年度末にようやく完全に終わるのだ。

尖閣諸島の領海侵入に対して「遺憾である」という言葉だけしか言えない日本は、中国軍を強化するために使われている日本国民の血税を、ODAとして、今もなお中国に献上しているのである。

6月19日のコラム<G7「一帯一路」対抗策は中国に痛手か_その2:対アフリカ中国債務はわずか20%>の末尾に、菅首相は17日の記者会見で「私は対中包囲網なんか作りませんから」と述べたと書いた。

中国を最大の貿易国とする日本は、ウイグルの人権問題に対して制裁を決議することができるマグニツキー法案を、今国会で取り上げなかった。

米中が覇権を争う中において、中国は日本に微笑みかけている。

半導体チップが欲しいし、日米を離間させたいとも思っている。

100年経ってもなお、日本は中国共産党の維持と発展に寄与していくつもりだろうか。

来年は日中国交正常化50周年記念なので、菅政権がまだ「中止する」と言っていない習近平の国賓訪日を実現させる可能性が残っている。こうして米中覇権争いにおいて中国に有利な状況を再生産していくつもりなのだ。

自民公明両党には、中国共産党100年の歴史を直視しろと言いたい。


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら

51-Acj5FPaL.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中