最新記事

ブータン

無残な民族浄化の「首謀者」に日本が叙勲...恥ずべき過ちだ

A Disgraceful Honor

2021年5月28日(金)17時59分
TP・ミシュラ(ブータンニュースサービス編集主幹)
ツェリン元駐日ブータン大使

日本政府から旭日重光章を授与されたツェリン元駐日大使 MINISTRY OF FOREIGN AFFAIRS, ROYAL GOVERNMENT OF BHUTAN

<日本が叙勲したブータンの元駐日大使は、かつて行われたネパール系住民の追放と弾圧の首謀者だった>

日本政府は4月末、ブータンのダゴ・ツェリン元内相に名誉ある旭日重光章を授与すると発表した。「日本・ブータン間の関係強化および友好親善に寄与した」というのが叙勲の理由だ。ツェリンは1999~2008年に駐日ブータン大使を務め、両国間のハイレベル訪問や文化交流を促進した点が高く評価された。

日本はツェリンの過去を知らないのだろうか。数十年前に当局の手で祖国を追われ、生活が一変したネパール系ブータン人は、この決定にショックを受け、困惑している。

1990年8月17日、ツェリンは内務副大臣の立場で、国外に逃れた南部のブータン人の国籍を剝奪する指令を出した。その中身はこうだ。

「政府は、南部のブータン人多数が反国家主義勢力に合流する目的で国を離れたことを把握した。直ちに県内全ての地区長、議員、一般市民に対し、反国家主義者に加勢するために出国した者はもはやブータン国民とは見なされないことを通知せよ」

ブータンのネパール系住民はその数十年前、南部の人口を増やして税収増につなげると同時に、インフラ整備の労働力を確保する目的で移住を奨励された人々の子孫だ。彼らはきつい労働と引き換えに国籍を与えられた。

略奪、放火、襲撃、逮捕、拷問、強姦...

この国籍剝奪措置に対し、故郷を追われたネパール系住民が差別的政策だとして反発。すると、ツェリンは国家権力を動員して略奪、放火、襲撃、逮捕、拷問、強姦などの弾圧を行い、さらに多くのネパール系住民を故郷から追い出して、無国籍状態にした。

インディア・トゥデー誌の90年9月号に掲載された記事には、ツェリンの思想がはっきりと表れている。ブータンの学校でネパール語を教えるのをやめた理由として、ツェリンは「われわれの経験では、ネパール系住民はわが国よりネパールへの帰属意識が強い」と述べている。

このネパール系住民への弾圧によって、筆者の父を含む多数の人々が何カ月も投獄され、精神的・肉体的拷問を受けた。当時は政府が国内メディアを完全に支配していたため、この残虐行為はほとんど外国に伝わらなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英CPI、食品価格データ収集で2月から新手法 若干

ビジネス

米アマゾン、全世界で1.6万人削減 過剰雇用是正と

ビジネス

ドルの基軸通貨としての役割、市場が疑問視も 独当局

ワールド

ロシア軍がキーウ攻撃、2人死亡 オデーサも連夜被害
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化はなぜ不可逆なのか
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 5
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    「恐ろしい...」キリバスの孤島で「体が制御不能」に…
  • 9
    「発生確率100%のパンデミック」専門家が「がん」を…
  • 10
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 5
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 6
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 7
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 8
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 9
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 10
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中