最新記事

子育て

乳幼児の発育に「スマホ=害」ではない 有意義な活用法を知ろう

Advanced Screening

2021年5月22日(土)13時21分

両親と遊び、おもちゃや本と触れ合い、砂場で過ごすことは赤ちゃんの脳の発達にとっては不可欠だ。しかし最近の複数の研究から、子供はビデオチャットを通して語彙や語学力を向上させられることが分かっている。

AAPも16年10月になって、時代にそぐわない厳格な指針を改め、新たなガイドラインを発表した。そこでは、2歳までの幼児は脳の発達や健全な親子関係のために、できるだけデジタルメディアの使用を避けるべきだとしているものの、利用する場合は「良質な番組を親子で見る」などし、「子供が何に関心があるのかを理解するのに役立てる」よう促している。

AAPメディア委員会のアリ・ブラウン委員長は「全てのテクノロジーは同じではないし、全てのメディアは同じではない」と語っている。「消費もあれば、創造も、コミュニケーションもある。2歳未満の子供にとって、YouTubeで延々とアニメを見続けるのと、祖母とビデオチャットするのとでは大きな差がある」

では、画面型メディアを見せるか見せないかを決めるときに、両親は何に気を付ければいいだろうか。目安となるのは、画面に現れたイメージが現実の物ではなく、記号であると子供が理解できるかどうかだと、トロセスは考えている。小さな子供が、画面の映像が現実とはどう違い、どう似ていて、どう現実を表しているのかを理解するのはかなり難しいことだ。

これが学齢期前くらいになれば、隣の部屋にいる両親と自分が接触できないのと同じように、画面の2次元映像と接触することはできないという基本的な考え方を学ぶようだ。

罪悪感を持つ必要はない

ただし、子供がこの能力を獲得する時期には個人差がある。

「分岐点となる『魔法の年齢』まで、子供を画面から完全に遠ざけておくことは間違っている」と、トロセスは言う。「絵本を読み聞かせるときと同じように、子供が画面上のことと現実世界の関係を理解しているかどうかを見守っていればいい。子供の側も、両親がビデオやタッチスクリーンのような情報源をどう使っているかを見ることで使い方を学んでいる」

それでも親たちにとって、スクリーンタイムは危険な坂道のようなものだと言える。激しい議論は続いているし、賛否両論あるテクノロジーについて正しい決断を下さなくてはという重荷は、大きなストレスになる。しかし、最も重要なのはパニックにならないことだ。

子供が親のスマホで遊んだり、遠くで流れているテレビを目にしたりすることについて母親や父親が罪悪感を覚えるのは、不必要な重荷でしかない。

子供と親が一緒に視聴したり遊んだりする、またはよく工夫されたアプリやビデオを子供が熱中して楽しんでいるのなら、きちんと管理されたスクリーンタイムは素晴らしい恩恵になる。親子が共に楽しみ、触れ合う良い機会になるからだ。

こうしたメディアの有意義な活用法を学ぶことは、親にも子供にも不可欠だ。どうすれば安全に自転車に乗れるか、どうすれば栄養のある食事を賢く取れるようになるかなどを学んでいくのと同じだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三菱商事、今期26%減益見込む LNGの価格下落な

ワールド

インド4月自動車販売、大手4社まだら模様 景気減速

ワールド

米、中国・香港からの小口輸入品免税撤廃 混乱懸念も

ワールド

アングル:米とウクライナの資源協定、収益化は10年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中