最新記事

気象

今年のハリケーンは、さらに記録破りとなる、と科学者が警告

2021年5月24日(月)18時30分
松岡由希子

2020年ハワイに接近したハリケーン「ダグラス」 NOAA Satellites

<アメリカ海洋大気庁(NOAA)気候予測センターは、2021年の北大西洋のハリケーンは、「60%の確率で平年以上となる」との予想を発表した>

北米・中米に大きな被害をもたらした昨年のハリケーンだが、アメリカ海洋大気庁(NOAA)気候予測センター(CPC)は、2021年6月1日から11月30日までの北大西洋のハリケーンシーズンについて「60%の確率で平年以上となる」との予測を発表した。

これによると、風速39マイル(約62.7キロ)毎時以上の熱帯低気圧が13〜20回、風速74マイル(約119キロ)毎時以上のハリケーンが6〜10回発生し、そのうち3〜5回は風速111マイル(約178キロ)毎時以上の大型ハリケーンになるとみられる。

海水温の上昇が熱帯低気圧の活動を活発にしている

気候予測センターでは、これまで、1981年から2010年までをもとに「熱帯低気圧12回、ハリケーン6回、大型ハリケーン3回」を平年値としていたが、2021年のハリケーンシーズンから、1991年から2020年までの最新の30年間をもとにこれを更新し、「熱帯低気圧14回、ハリケーン7回、大型ハリケーン3回」を新たな平年値と定めている。

また米コロラド州立大学でも、4月8日、2021年の北大西洋のハリケーンシーズンの予測を発表。これによると、熱帯低気圧17回、ハリケーン8回、大型ハリケーン4回が発生すると予測されている。

平年値が上昇した背景には、海洋大気庁の次世代環境観測衛星など、観測プラットフォームの改善に加え、気候変動に伴う気温や海水温の上昇により、熱帯低気圧の活動が活発化していることがあげられる。また、北大西洋の平均海面水温が数十年周期で変動する「大西洋数十年規模振動(AMO)」において、海水温が高い時期にあることも影響している可能性がある。

ハリケーンの風速は、60年前の2倍以上に

40年にわたる4000以上の熱帯低気圧の分析は、地球の気温が上昇するにつれてこうした嵐が頻繁になり、強さを増していることを示している。バミューダ諸島を襲ったハリケーンの風速は、60年前の2倍以上になっており、温暖化した海から強烈な破壊力を引き出している。

また、過去10年間のハリケーンが10%多い降雨量で、沿岸地域を氾濫させており、その数は今世紀末までに、30%上昇する可能性があると示されている。

このように北大西洋では平年以上のハリケーンシーズンになると予測されている一方、中央太平洋での熱帯低気圧の発生は平年並みもしくは平年以下と予測されている。

気候予測センターは、5月19日付の発表で、中央太平洋の2021年のハリケーンシーズンは「45%の確率で平年並み、35%の確率で平年以下」と予測している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

赤沢再生相、ラトニック米商務長官と3日と5日に電話

ワールド

OPECプラス有志国、増産拡大 8月54.8万バレ

ワールド

OPECプラス有志国、8月増産拡大を検討へ 日量5

ワールド

トランプ氏、ウクライナ防衛に「パトリオットミサイル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    反省の色なし...ライブ中に女性客が乱入、演奏中止に…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中