最新記事

韓国

文在寅政権・与党関係者の相次ぐ不正行為に不満が鬱積......ソウルと釜山の市長選惨敗の背景

2021年4月20日(火)15時00分
佐々木和義
韓国の国産戦闘機「KF-X」のプロトタイプの前でスピーチする文在寅大統領

韓国の国産戦闘機「KF-X」のプロトタイプの前でスピーチする文在寅大統領 4月9日 Yonhap/REUTERS

<韓国与党・共に民主党は、大統領選挙の前哨戦と位置付けられたソウルと釜山の市長選挙で惨敗した。その背景とは...... >

韓国の文在寅大統領は、2021年4月16日、辞意を表明した丁世均(チョン・セギュン)首相の後任に金富謙(キム・ブギョム)元行政安全部長官を指名し、併せて国土交通部、産業資源部、科学技術部、雇用労働部、海洋水産部の長官と青瓦台(大統領府)の首席秘書官などの交代人事を発表した。首相は国会人事聴聞会と任命同意、閣僚は国会人事聴聞会を経て正式に任命される。

今月7日に実施されたソウルと釜山の市長選挙の与党が惨敗したことを受けた人事とみられている。市長再・補欠選の惨敗で与党・共に民主党の指導部が引責辞任し、また青瓦台等の人事刷新を求める声が党内から上がっていた。

文在寅政権発足以来、与党・共に民主党は圧勝が続いていたが......

丁世均首相の辞意は、来年の大統領選を見据えたもので、交代する閣僚のうち、国土相は不動産政策とLH疑惑、雇用労働部も就業環境の悪化が市長選で与党が惨敗した要因にあった。

4月7日、韓国与党・共に民主党は、大統領選挙の前哨戦と位置付けられたソウルと釜山の市長選挙で惨敗した。

ソウルは野党「国民の党」の呉世勲(オ・セフン)候補が57.5%を獲得し、共に民主党の朴映宣(パク·ヨンソン)候補は39.21%だった。釜山も野党の朴亨埈(パク・ヒョンジュン)候補が62.7%を得票、与党の金栄春(キム・ヨンチュン)候補は34.4%に留まった。ほかにも19の自治体の再・補欠選が行われたが、与党の当選は全羅道議会の4議員にとどまった。

与党・共に民主党は17年5月の文在寅政権発足以来、圧勝が続いていた。2018年6月の地方一斉選挙では、17の市長・道知事選で14人が当選。2020年4月の総選挙でも国会300議席のうち180議席を獲得した。
新型コロナウイルスの初期対策に失敗した後、総選挙の直前に新規感染者が減少、K-防疫をアピールして勝利したが、総選挙後からふたたび感染が拡大している。

政府関係者の相次ぐ不公正・不当な行為に不満が蓄積

文在寅大統領は2017年5月10日の就任演説で、「機会は平等、過程は公正、結果は正当」、また「一度も経験したことのない国を作る」と述べて国民の期待を集めた。しかし、就任から4年近く経ったいま、政権を批判する人々は「一度も経験したことがない」酷い国になったと皮肉っている。

韓国国民は、政府高官や政府関係者の不平等と相次ぐ不公正・不当な行為に不満を抱いている。

政権発足直後、政府が平昌冬季五輪で南北合同チームを推進し、韓国の選手が出場機会を失う結果となった。また、仁川国際空港公社の非正規職員を正規職に転換したが、手続きが公正ではなかったという声が上がった。

19年8月には、曺国(チョ・グク)元法務部長官にさまざまな不正疑惑が生じたが、なかでも娘がコネで名門大学に入学した疑惑が若い層の政権離れを引き起こした。学歴社会の韓国では、出身大学が人生を左右する傾向が強く、名門大学を目指して必死に勉強してきた若者を中心に入学の取り消しを求める声が上がったのだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、アイオワ州訪問 建国250周年式典開始

ビジネス

米ステーブルコイン、世界決済システムを不安定化させ

ビジネス

オリックス、米ヒルコトレーディングを子会社化 約1

ビジネス

米テスラ、6月ドイツ販売台数は6カ月連続減少
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 6
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中