最新記事

クーデター

ミャンマー「SNS戦争」、国軍対フェイスブック

Another War for Democracy

2021年3月9日(火)19時45分
海野麻実(ジャーナリスト)

デモによる犠牲者を弔う市民 REUTERS

<ミャンマーで圧倒的シェアを誇るフェイスブック、ネット上で市民を恫喝する国軍の利用を禁止したが>

ミャンマー(ビルマ)でクーデターが起きてから5週間。国軍による市民への攻撃は過激さを増し50人超の犠牲者を出す惨事になっているが、抗議活動を諦めない人々の姿は今も路上にあふれる。国民が一丸となって主権の奪還を求めて戦う傍らで、民主主義を懸けて軍と戦うもう1つの「戦士」がいる。フェイスブックだ。

軍やその関係者は戦車や銃弾だけでなく、フェイスブックを中心としたソーシャルメディア上でもプロパガンダや恐喝めいた投稿を通じて市民への攻撃を強めている。そのためフェイスブックはクーデターが始まって以降、ミャンマーの現地スタッフを総動員して24時間体制でモニタリングを続けている。

2月12日には「誤った情報の拡散を続けている」と、国軍を偽情報の発信源と断定。軍が運営するフェイスブックページやコンテンツがフェイクニュースを拡散し続けているとして、それらの数を減らすと表明した。さらにそうしたコンテンツを「おすすめ」としてフィードに表示することも中止するなど、軍が運営するページのコンテンツ配信も大幅に縮小すると決定した。投稿自体は禁止しないものの、タイムライン上に流れる機会を大幅に減らした形だ。

そしてデモ隊への発砲で死者が出た状況を重く見たフェイスブックは2月25日、「軍のフェイスブック利用を認めることのリスクがあまりに重大」だとして、ついに軍や軍関係者の全てのアカウント利用を停止すると発表した。

「フェイスブックはさらなる緊張を高める偽情報などのコンテンツをなくすため、ミャンマーにおける政治的状況をつぶさにモニタリングしている」と、フェイスブック東南アジア担当で公共ポリシー責任者であるラファエル・フランケルは言う。

「市民の安全な状況を確保し、暴力やヘイトスピーチ、有害な偽情報など私たちのポリシーを破るコンテンツを削除している」

ネット=フェイスブック

プロパガンダやヘイト投稿への対応は今や全てのソーシャルメディアの課題だが、ミャンマーにおいてことさらフェイスブックが注目されるのは、その影響力ゆえだ。

50年に及ぶ軍事政権が続いたミャンマーは、2011年に民政移管を成し遂げて以降、多くの国民がスマートフォンを手にするようになった。なかでもフェイスブックユーザーは劇的なスピードで増え続け、現在は国民約5700万人のうち半数以上が利用している。ツイッターやインスタグラムなどを含むSNS全体に占めるシェア率では、実に94%以上を誇る。検索もグーグルやヤフーよりフェイスブックの検索機能が多用される。ミャンマー国民にとって、フェイスブックとインターネットは同義語だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

欧州各国とカナダの防衛費、25年に20%増=NAT

ワールド

イスラエル、革命防衛隊のタングシリ海軍司令官を殺害

ワールド

マレーシア首相、イラン・エジプト首脳らと会談 ホル

ワールド

ベネズエラのマドゥロ氏、NY地裁出廷 弁護士費用巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「日本産ミュージカルの夢」に賭ける理由【独占インタビュー】
  • 4
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 5
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 6
    トランプが誤算? イラン攻撃延期の舞台裏、湾岸諸国…
  • 7
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 8
    100年の時を経て「週40時間労働」が再び労働運動の争…
  • 9
    親の遺産はもう当てにできない? ベビーブーム世代…
  • 10
    「予想よりも酷い...」ドラマ版『ハリー・ポッター』…
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 9
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中