最新記事

韓国

韓国農業は日本依存度が極めて高かった 種苗から農機具まで

2021年3月29日(月)18時30分
佐々木和義

韓国製農機具のエンジンは50%が日本製

農機具も日本依存が極めて高い。韓国農協がまとめた「農機購入支援事業の融資実績」によると、2013年から2018年5月までの5年間に韓国で販売された農機のうち、トラクターの13.6%、田植え機の40.5%、コンバインの29.9%が輸入機械で、ヤンマー、クボタ、イセキが多かった。なかでも田植え機は、ヤンマー製が26.1%を占めていた。

韓国農機具市場で日本メーカーが占める割合は30%程度だが、韓国製農機具のエンジンは50%が日本製で、自動変速機や電装技術、統合制御システムなどの核心部品は日本製が60-100%を占めており、100%日本製部品で作られた韓国製農機具もあるという。

韓国農業機械1位の大同工業は、自社製エンジンを搭載するが、主要部品を日本から輸入しエンジン以外の核心部品も多くを日本から輸入している。業界2位の東洋物産はヤンマー製エンジンを搭載する。日本政府の輸出管理強化で、米国製やドイツ製への切り替えを検討したが、輸送コストが増える上、エンジンを変えると機械の内部設計をやり直さなければならなくなる。

大同工業は日本政府の韓国向け輸出管理を強化で、部品需給に影響が出る事態を憂慮し、国産化を推進するため政府支援を求めたが、容易ではない。

農業機械の購入者はほとんどが個人農家で、トラブル時の大規模修繕や入れ替えは容易ではなく、同じ農機具を同じ時期に使う特性から代替機の確保も難しい。さらに農家が、信頼性が高く広く普及しているヤンマー製エンジンを搭載した機械を選ぶなど、日本製のニーズが高いのだ。

特許の壁もある。ヤンマーやクボタなど、日本の農機具メーカーは、1999から2017年の間に、トラクターは58%、コンバインは96%、田植え機は89%の核心部品の特許を韓国で取得した。農業機械は需要が限られ、研究開発費の回収は難しい。特許侵害を避けるとなると尚更だ。

韓国の種子自給率は26.2%

韓国の19年の種子自給率は26.2%で、1億2000万ドル余りを米国、中国、日本などから輸入した。稲、麦、唐辛子などは100%自給だが、リンゴ81%、ブドウ96%、ミカン97.7%など、多くを海外に依存している。

韓国農村振興庁は、国産品種の開発と普及に取り組むが、供給量に限界があり、また農家が日本品種を最高と認識していることも普及を妨げる要因になっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米とウクライナ、和平案を「更新・改良」 協議継続へ

ビジネス

FRBの金融政策は適切、12月利下げに慎重=ボスト

ビジネス

米経済全体の景気後退リスクない、政府閉鎖で110億

ワールド

アングル:労災被害者の韓国大統領、産業現場での事故
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナゾ仕様」...「ここじゃできない!」
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 5
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】いま注目のフィンテック企業、ソーファイ・…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中