最新記事

中国

習近平の「鄧小平への復讐」――禁断の華国鋒主席生誕百年記念行事挙行

2021年3月16日(火)11時17分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
中国共産党 人民大会堂

裏切りと陰謀をくり返してきた中国共産党政権 Carlos Garcia Rawlins-REUTERS

鄧小平により不当に失脚に追い込まれた華国鋒・元主席は名前さえ出すことが禁止されていたが、習近平はその禁を破った。自分の父・習仲勲を失脚させた犯人が鄧小平だからだ。

毛沢東に後事を託された華国鋒

1976年9月9日、建国の父・毛沢東が他界したが、4月30日には「あなたがやれば、私は安心だ」というメモを残して、後事を華国鋒(1921年~2008年)に託している。

このメモの信憑性を疑う論調もあるが、1972年2月21日に訪中したニクソン元大統領の通訳をした章含之氏が『分厚い大紅門を乗り越えて』(2002年)という本の中で証言しているので確かだろう。

しかし毛沢東亡き後、毛沢東夫人の江青(ジャン・チン)を中心とした文化大革命(文革)4人組が政権を奪取しようとしたので、華国鋒は間髪を入れずにクーデターを起こして武力で4人組を逮捕し、文革を終了させた(1976年10月6日)。

その結果、華国鋒は、「中共中央主席・中央軍事委員会主席・国務院総理」と、「党・軍・政」の三大権力を一身に担った。

そして第一次天安門事件(1976年4月)で周恩来の追悼デモを扇動したとして毛沢東の怒りを買い全ての職を剥奪されていた鄧小平を、なんとか政治復帰させてあげようと、華国鋒は奔走するのである。

恩を仇で返し、華国鋒を失脚させた鄧小平

華国鋒の必死の努力の結果、1977年7月、鄧小平は政治復帰し「中共中央副主席、中央軍事委員会副主席、国務院副総理」などの高位のポジションを華国鋒からもらい、中国人民解放軍の総参謀長の地位まで手に入れた。

こうなったら強い。

華国鋒が努力しなかったら文革も収束しなかったし、特に鄧小平はこんな高位で政治復帰など出来なかったのに、中国人民解放軍総参謀の地位を利用して、中国全土の軍区に根回しをして、華国鋒の辞任を迫った。

特に1979年2月にベトナムに戦争を仕掛けて中越戦争を起こしたのが決定打となった。

なぜなら華国鋒は中央軍事委員会主席の座にいても、実際に軍を動かす力がなかったからだ。総参謀長の座は鄧小平が握っている。外国に戦争を仕掛けたら指揮力がないことが露呈する。そこに狙いを定めて鄧小平は日本やアメリカを訪問して国際社会における自分の力をアピールしておいてから中越戦争に入った。

ほかにも様々な陰謀を企てて「中共中央主席・中央軍事委員会主席・国務院総理」と、「党・軍・政」の三大権力を一身に担っていた華国鋒に辞任を迫るのである。

その時の理由が「華国鋒が文革に戻ろうとしている」とか「華国鋒が毛沢東を崇拝している」といった、およそ理屈にならない批判だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、南シナ海でフィリピン船に放水砲

ワールド

スリランカ、26年は6%成長目標 今年は予算遅延で

ビジネス

ノジマ、10月10日を基準日に1対3の株式分割を実

ワールド

ベトナム、水産物輸出禁止の再考を米に要請
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中