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全人代、中国の中小零細企業の危機あらわに

2021年3月9日(火)13時27分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
中国 全人代

2021年3月5日に開幕した全人代 Carlos Garcia Rawlins-REUTERS

3月5日の全人代政府活動報告は、中国企業雇用の80%を担う中小零細企業の危機をあらわにした。報告が反省の念をくり返すのも珍しい。この問題を緊急に解決しなければ政府転覆にもつながりかねないからだろう。

中国の中小零細企業が置かれている現状

まず中国の中小零細企業が中国経済に対して貢献している要素を、いくつか列挙してみる(2020年段階)。

 ●中小零細企業は中国企業雇用の約80%を担っている。

 ●中小零細企業は特許発明の70%を占めている。

 ●中小零細企業は中国のGDPの60%に貢献している。

 ●中国の税収の50%以上は中小零細企業による寄与である。

これに対して中小零細企業が置かれている過酷な現実は以下のようになる。

 ▲融資をなかなか受けられないため、企業寿命が短い。

 ▲米中貿易戦争により輸出不況をまともに受けダメージが大きい。

 ▲コロナにより生産中止に追い込まれ、サービス業は客の減少で倒産。

 ▲小売業など個人経営者はアリババなど大手IT企業に食われ消滅の危機にある(これに関しては本稿最後に分析を加える)。

 一方、中国の国家統計局が2019年末に行った全国経済国勢調査によれば、 2018年末で中国の中小零細企業企業は1,807万社で、全企業の99.8%を占めている。中型企業は23.9万社で1.3%、小型企業は239.2万社で13.2%、零細企業は1543.9万社で85.3%を占めていることがわかった。同調査は、2018年末における中小零細企業の雇用者数は2億3,304万人で、全企業の雇用者の79.4%を占めることを示している。

もしこれら中小零細企業に従事する労働者が揃って不満を訴えれば、政府転覆につながり兼ねない。中国政府が焦るのも当然のことだろう。

政治活動報告で危機感あらわに

3月5日の全人代(全国人民代表大会)における李克強国務院総理による政府活動報告では、中小零細企業の調整に対する謝罪にも似た中国政府の反省が吐露されるという、実に珍しい現象が起きた。それくらい事態が深刻であることが窺(うかが)われる。

その上で以下のような問題点の指摘と今後の政策が披露された。

1.昨年実施した政策について

経済安定策としては、改革とイノベーションに焦点を当てて活力を喚起すると同時に、最も直接的なダメージを受けている中小零細企業や個人経営者が苦境を乗り越えるための支援を行った。また中小零細企業への融資の元利償還を猶予し、融資を増やして金利を下げるように支援した。大手商業銀行は中小零細企業への融資を50%以上増やし、金融システムは15兆元の実体経済への利益を提供した。

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