最新記事

バイデン 2つの選択

バイデン政権はブルーカラーを失望させたオバマの過ちから学べるか

LEARNING FROM OBAMA’S FAILURES

2021年2月4日(木)18時30分
デービッド・シロタ(ジャーナリスト)

上院では、急進派のシェロッド・ブラウンが銀行委員会を率いる予定だ。ブラウンは2008年の金融危機後に大手金融機関の分割に向けて尽力したが、当時の銀行委員会の委員長を務めていたクリストファー・ドットとオバマ政権に妨害された。今のブラウンはこの法案を復活させられる立場にあり、「ウォール街がアメリカ経済全体を支配すべきではない」と語って、超党派の支持獲得に自信をのぞかせている。

一方、上院予算委員会のトップに就くのはバーニー・サンダースだ。連邦予算に優先順位を付けたり、巨額の費用がかかる案件について上院でのフィリバスター(議事妨害)を回避するための財政調整措置と呼ばれる難解な手法を行使できる立場にある(自身が最近提案した、コロナ禍の最中には保険加入の有無にかかわらず全員を医療保険の対象とする計画も、この措置の対象となる)。

平時とは異なる対応が必要だ

オバマ時代の民主党は、しばしば権力の行使をためらってきた。公的医療保険法案を成立させるために財政調整措置を利用しなかったのも、その一例だ。対照的に、トランプ政権時代の共和党陣営はこの手法を活用して富裕層向けの大型減税などの政策を推し進め、議会審査法を使ってオバマ時代に制定された法律を次々に廃止した。

変化を起こすためにあらゆる手段を用いることの道義的、政治的な必要性をサンダースはワシントンの誰よりも理解している。「ルーズベルト以降、この国で見られなくなった大胆さを持って行動すべきだ」と、サンダースはNBCニュースに語っている。「できなければ、われわれは2年後に過半数を握っていないだろう」

バイデンは、コロナ危機以前の普通の生活を取り戻すと約束して大統領選を戦った。だが、アメリカをどん底から救い、独裁主義の高まりを食い止めるにはそれだけでは不十分だ──ちょうど大恐慌時代に、それだけでは不十分だったように。

当時、ルーズベルトは平時のやり方ではファシズムを食い止めて国家を救うことはできないこと、もっと大きな動きが必要であることを理解していたようだ。「冷淡で身勝手な悪行を信奉してきた金融と企業の行動に終止符を打たねばならない」と、彼は1期目の就任演説で語った。「回復が必要なのは倫理面の変化だけではない。この国は行動を求めている。今すぐの行動を」

この言葉は、現在のような危機の時代にも当てはまる。アメリカに何より必要なのは、バイデンによる「国家の魂」への退屈な賛歌ではなく、急進派に背中を押されて行動を起こし、労働者階級にリアルな物質的恩恵をもたらす新政権だ。

それが実現しなければ、相変わらずの不平等と貧困と機能不全に対する怒りの波が高まり、それに乗じて新たな右派系独裁主義者が現れる可能性が高い──その人物は、トランプ以上の危険をはらんだ存在となるだろう。

<2021年2月2日号「バイデン 2つの選択」特集より>

20240618issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年6月18日号(6月11日発売)は「姿なき侵略者 中国」特集。ニューヨークの中心やカリブ海のリゾート地で影響力工作を拡大する中国の「ステルス侵略」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-イスラエル、ガザ南部で軍事活動を一時停止 支

ワールド

中国は台湾「排除」を国家の大義と認識、頼総統が士官

ワールド

米候補者討論会でマイク消音活用、主催CNNが方針 

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年1月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「珍しい」とされる理由

  • 2

    FRBの利下げ開始は後ずれしない~円安局面は終焉へ~

  • 3

    顔も服も「若かりし頃のマドンナ」そのもの...マドンナの娘ローデス・レオン、驚きのボディコン姿

  • 4

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開する…

  • 5

    米モデル、娘との水着ツーショット写真が「性的すぎ…

  • 6

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…

  • 7

    なぜ日本語は漢字を捨てなかったのか?...『万葉集』…

  • 8

    メーガン妃「ご愛用ブランド」がイギリス王室で愛さ…

  • 9

    水上スキーに巨大サメが繰り返し「体当たり」の恐怖…

  • 10

    サメに脚をかまれた16歳少年の痛々しい傷跡...素手で…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 5

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 6

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 7

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 10

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中