最新記事

陰謀論者

米共和党、Qアノン信奉者の新人議員の扱いでアイデンティティー危機

Parkland Mom Says Marjorie Taylor Greene Won't Disavow Shooting Conspiracies Publicly

2021年2月4日(木)17時05分
ダーニャ・ハジアジ

トランプの弾劾訴追に反対したグリーン(1月13日) House TV/REUTERS

<銃乱射事件は役者を使ったねつ造だ、と言い放つ陰謀論者マージョリー・テイラー・グリーン下院議員が「共和党のがん」として悩みの種に>

共和党の米連邦下院議員マージョリー・テイラー・グリーン(ジョージア州選出)が、フロリダ州パークランドの高校や、コネチカット州のサンディフック小学校で起きた銃乱射事件に関する陰謀論を、公の場で否定する意思がないことが明らかになった。グリーンと面会したパークランド事件の遺族が1月31日、MSNBCに語った。

リンダ・ビーゲル・シュルマンの息子スコット・ビーゲルは、2018年2月14日にパークランドで起きた銃乱射事件で命を落とした17人のうちの1人。地理の教師で当時35歳だったビーゲルは、生徒たちを安全な場所に避難させるべく、教室に誘導していたところを撃たれて亡くなった。グリーンは、これらの銃乱射事件は「捏造」で、何者かに仕組まれたものだと主張してきた。シュルマンはグリーンと面会し、公の場で真実を語るよう迫ったが失敗したという。

議事堂を占拠して政府の妨害を止めろ、と呼びかけるグリーン

2020年11月の選挙で連邦下院議員に初当選したグリーンは、ドナルド・トランプ前米大統領の忠実な支持者で、Qアノンの陰謀論も支持してきた。トランプもグリーンを「共和党の希望の星」と称えたことがある。その彼女が議員になる前、グリーンがソーシャルメディアに投稿してきた過激な発言が今改めて問題になっている。共和党の品位が再び問われる事態だ。

「共和党」のがんなのに

銃乱射事件は捏造で、教師たちは役者で子供は人形だとしたほか、銃規制を厳しくしたいナンシー・ペロシ下院議長(民主党)が黒幕だ、と投稿したこともある。ペロシ暗殺の投稿に「いいね!」したこともあった。大統領選には不正があったとするトランプ前大統領の主張も一貫して支持。カリフォルニアの山火事はユダヤ人が宇宙から撃ったレイザーのせいで、9.11同時多発テロは起こらなかったと言う。「誰か見た人いる?」

銃乱射事件は、人々を怖がらせて銃を取り上げる陰謀ではないか、と言うグリーン

共和党上院院内総務のミッチ・マコネルはグリーンを「共和党のがん」とまで呼んだが、今もトランプを恐れる共和党保守派は彼女を非難することができない。そんな共和党指導部が、こともあろうにグリーンを連邦下院の教育・運輸委員会にグリーンを任命してしまった。同委員会は、学校の安全について審議を行なう場所だ。

1月28日には、2012年12月に起きたサンディフック小学校での銃乱射事件で2人の子どもを亡くした両親が、グリーンの任命を批判した。下院民主党はグリーンの委員会からの除名を求める決議案を提出したが、2月3日、共和党下院のケビン・マッカーシー院内総務は処分を拒否し、グリーンのような人間に対する弱さを露呈した。4日に下院で投票にかけられる。どちらに転んでも、グリーンは今後も共和党を分断する存在になりそうだ。

銃使いであることを選挙の売りにするグリーン(下2枚) 

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

NYタイムズ、パープレキシティAIを提訴 無断複製

ワールド

プーチン氏、インドに燃料安定供給を確約 モディ首相

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億

ビジネス

米ミシガン大消費者信頼感、12月速報値は改善 物価
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開きコーデ」にネット騒然
  • 4
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 5
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 6
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 8
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 9
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中