最新記事

ワクチン

新型コロナ・ワクチンの接種後もマスク着用が必要な理由

2021年1月6日(水)17時50分
松岡由希子

世界各地で新型コロナウイルスワクチン接種が始まっている...... REUTERS/Benoit Tessier

<新型コロナウイルスワクチンを接種しても100%感染しないというわけではなく、無症状病原体保有者と同様に、他者に新型コロナウイルスを感染させる可能性はある...... >

アメリカ食品医薬品局(FDA)は、2020年12月11日、米ファイザーと独ビオンテックが共同開発した新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を許可し、12月14日、米国でその接種を開始。

アメリカでは483万人以上が1回目のワクチン接種を終えた

12月18日には、米モデルナの新型コロナウイルスワクチンの緊急使用も許可され、2021年1月5日時点で、米国で483万人以上が1回目のワクチン接種を終えた。いずれの新型コロナウイルスワクチンも、約4週間の接種間隔をあけて2回接種すると、約95%の有効性が確認されている。

米国に先駆けて12月8日に接種を開始した英国では、新型コロナウイルスの急速な感染拡大を受け、12月30日以降、2回目の接種よりも、重症化リスクの高い人により多く1回目のワクチンを接種させることを優先している。

しかし、ファイザーが「新型コロナウイルスワクチンの単回接種で、接種から21日後に感染から予防することを示すデータはない」と述べているように、新型コロナウイルスワクチンの単回接種でどのような免疫反応があるのかは明らかになっていない。

ワクチンによる免疫の持続期間は解明されていない

これまでの新型コロナウイルスワクチンの臨床試験で検証されたのは「被験者が新型コロナウイルス感染症に発症しないかどうか」だけだ。つまり、ワクチンによって新型コロナウイルス感染症の発症は予防できるかもしれないが、100%感染しないというわけではなく、無症状病原体保有者と同様に、他者に新型コロナウイルスを感染させる可能性はある。

新型コロナウイルスワクチンによる獲得免疫は6ヶ月程度持続できるとみられているが、その持続期間は完全に解明されていない。また、臨床試験で約95%の有効性が示されているとはいえ、臨床試験と実際の集団予防接種では、ワクチンの保管や運搬など、様々な条件が異なるため、ワクチンの有効性が同じであるとは限らない。

ワクチン接種が進んでも、マスクの着用、手洗いは不可欠に

人口のどれくらいの割合が新型コロナウイルスに対して免疫を持てば、感染拡大の抑制につながる「集団免疫」を獲得できるのかも、現時点ではわかっていない。米ギャラップによる世論調査では、2020年11月時点で、米国人の37%が新型コロナウイルスワクチンの接種に消極的な姿勢を示しており、集団免疫を妨げる要因となることも懸念されている。

世界各国で集団予防接種がすすむとしても、新型コロナウイルス感染症の発生が続いている限り、ソーシャルディスタンスの確保やマスクの着用、手洗いといった感染予防策の徹底は不可欠だ。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)では、新型コロナウイルスワクチンを2回接種した後も、マスクの着用とソーシャルディスタンスの確保を継続して行うよう呼びかけている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、イランと協力拡大の用意 あらゆる分野で=大

ワールド

インタビュー:高市新首相、タカ派的言動も中韓外交は

ビジネス

金利先高観から「下期偏重」で円債買い、年間残高は減

ワールド

米ロ首脳会談、開催に遅れも 準備会合が延期=CNN
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 7
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 10
    若者は「プーチンの死」を願う?...「白鳥よ踊れ」ロ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中