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硫黄島記念碑の星条旗にアメリカ人が見いだす真の意味

Monumental Perceptions

2021年1月4日(月)13時30分
キース・ロウ(イギリス人歴史家)

こうした慣行は第2次大戦前から存在したが、米国民と国旗の聖なる絆はこの戦争によって確かなものになった。

大半のアメリカ人にとって米国旗は、単なる「国家」をはるかに超えたものを意味している。ヨーロッパの人間はこの点を理解できない。星条旗はアメリカ人が普遍のものと信じる美徳、すなわち希望や自由、公正、民主主義の象徴だ。

米国民は41~45年、彼らの国旗が欧州と太平洋で前進するさまを見守り、それに伴って広がる解放を目にし、アメリカは素晴らしいことをしていると知った。第2次大戦後は打ち負かした敵に寛大な態度を示し、敗戦国の経済的な立ち直りを助け、独立性を早期に返還した。

硫黄島記念碑が持つ決定的な意味は、そこにある。敵地に星条旗を立てる米兵士の姿は、支配ではなく自由を表す。

アメリカ人はこの点を直感的に理解している。だからこそ彼らは45年以降、韓国やベトナム、グレナダ、ソマリア、アフガニスタンで誇らしげに米国旗を掲げた。2003年、イラクのバグダッド解放の際には米海兵隊員がフィルドス広場に立つサダム・フセイン像によじ登り、星条旗でフセインの顔を覆った。

アメリカ人は自国が促進する価値観を熱烈に信じている。全く同じ価値観を守るために、彼らは第2次大戦を戦った。

残念ながら、ほかの国々の見方はかなり異なる。米国内に翻る星条旗がどれほど輝かしくても、外国の領土に掲げられたとき、それは全く違うものに見え始める。

Excerpted from "Prisoners of History: What Monuments to World War II Tell Us About Our History and Ourselves" by Keith Lowe. Copyright © 2020 by the author and reprinted by permission of St. Martin's Publishing Group.

<本誌2020年12月15日号掲載>

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