最新記事

米司法

選挙無効からレイプ名誉棄損まで、トランプに保守派がノーを突き付ける

How the Courts Thwarted Donald Trump

2020年12月15日(火)14時35分
スティーブ・フリース(ジャーナリスト)

選挙結果を覆そうとするトランプの法廷闘争は不発に終わっている CARLOS BARRIA-REUTERS

<トランプ陣営が起こした訴訟はほとんどが敗訴や棄却に終わっているが、大統領選絡みのものだけではない。保守派判事を大量に指名し、裁判を有利に運ぼうという思惑通りに行っていないのはなぜか>

ドナルド・トランプ米大統領は再選にノーを突き付けられたことが気に入らないらしく、大統領選に不正があったと主張して譲らない。トランプ陣営は選挙結果に異議を唱えて次々に訴訟を起こしているが、今のところほとんどが敗訴や棄却に終わっている。

トランプは「最高裁まで戦い続ける」と誓ったが、戦いの行方は厳しい。12月8日には連邦最高裁がペンシルベニア州の開票結果に対するトランプ陣営の異議申し立てを退けた。大統領選関連の一連の訴訟で、最高裁が判断を示したのはこれが初めてだ。

実は選挙絡みの敗訴は、法廷におけるトランプの惨憺たる「戦績」のごく一部にすぎない。つい最近、12月1日にもカリフォルニア州連邦地裁の判事が専門職の外国人労働者の締め出しを狙ったトランプ政権の政策を無効とする判断を下したばかりだ。

今秋にはまた、トランプの指名した、チャド・ウルフ国土安全保障長官代行とウィリアム・ペリー・ペンドリー内務省土地管理局長官が発令した規則が、連邦裁判所の判断で無効となった。この2人の就任手続きには違法性があったという理由からだ。

また動画投稿アプリTikTok(ティックトック)の新規ダウンロード禁止についても、首都ワシントンなどの連邦地裁の判断を受けて、商務省は禁止措置を見送らざるを得なくなった。さらにトランプにレイプされそうになったと主張し嘘つき呼ばわりされたライターが起こした名誉毀損の訴訟。司法省は大統領の職務に支障があるとして介入を試みたが、これについてもニューヨークの連邦地裁が介入を認めない判断を下した。

注目すべきは、選挙関連の訴訟でもそれ以外の訴訟でも、リベラル派の判事がトランプに不利な判断を下したとは限らないことだ。彼らの中には保守派もいれば、民主党員も共和党員もいる。一部はトランプが指名した判事だ。

共和党が多数を占める上院はトランプの越権行為に見て見ぬふりを決め込んできた。メディアがいくら批判しても、民主主義の規範を執拗に壊し続けるトランプの暴走は収まらない。そうしたなかで司法が毅然として暴君にノーを突き付ける「最後のとりで」になっている。

「保守の牙城」のはずが

トランプが「大統領の権限を甚だしく越えると、裁判所が容赦なく打ちのめしてきた」と、弁護士のマリサ・マレックは言う。マレックは連邦最高裁判事クラレンス・トーマスの下で働いた経験があり、共和党の法務顧問を務めていたが、2016年のトランプの大統領選勝利を受けて辞任した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

フィッチが仏国債格下げ、過去最低「Aプラス」 財政

ビジネス

中国、米の半導体貿易政策を調査 「差別的扱い」 通

ワールド

アングル:米移民の「聖域」でなくなった教会、拘束恐

ワールド

トランプ氏、NATOにロシア産原油購入停止要求 対
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で最も「火山が多い国」はどこ?
  • 9
    村上春樹は「どの作品」から読むのが正解? 最初の1…
  • 10
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中