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コロナ禍で加速する地方移住 東京が最大の人口流出地域に

2020年12月2日(水)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)

「密」を回避するためテレワークを導入する企業が増えているが、それなら東京にいる必要はない。各種のイベントや文化施設も活動自粛が続いており、文化・娯楽面のメリットも薄れている。あるのは混雑と高い家賃だけで、東京からの脱出が増えているのも分かる。

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<図2>は、10月の47都道府県の転入超過数をグラフにしたものだが、東京の位置が大きく変わっているのが分かる。2019年までは首位だったが、今年になって一気に最下位に落ちている。コロナ禍によって、東京は最大の人口流出都道府県に変わった。たった1年間でここまで激変したことは、関東大震災や戦争期を除いてなかったのではないか。

東京を出て行くのはどういう人かというと、転入超過数は30~40代でマイナスに大きくふれている。働き盛りの子育て年代だが、テレワークが可能になったことに加え、「密」な環境を避けて子育てをしたい、という意向もあるだろう。

なお、地方ほど1学級あたりの子どもの数は少なくなっている。2019年度の公立小学校の中央値を見ると、最も多い東京は30.0人であるのに対し、最も低い高知県は16.6人だ。高知の学級密度は、東京の半分であることが分かる。移住して「密」を避け、少人数教育の恩恵に預かるのもいい。

大変な時期だが、このように長らく続いてきた(悪しき)慣行を覆す変化も出てきている。それを的確にとらえ、促していくのは行政の役割だ。

<資料:総務省『住民基本台帳人口移動報告』

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