最新記事

感染症対策

コロナワクチン接種、EUに先駆けスイスでも開始へ 一方で国民の多くは懐疑的

2020年12月22日(火)10時20分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

スイスはファイザー製のコロナワクチンを世界で初めて通常承認して接種開始する。REUTERS/Amir Cohen

<世界で初の通常承認でのワクチン接種を開始するスイスだが、なぜか国民は否定的な反応>

新型コロナウイルスのワクチン接種が、世界で少しずつ始まった。EUでも12月27日ごろから開始されるというが、非EU国のスイスでは一足早く12月23日から始まる。

スイスでは、他国のような緊急使用ではなく通常承認で、これは世界で初めてのことだとスイスの治療薬の認可監督機関であるスイスメディックは発表している。

使用されるワクチンは、他国でも使われている米ファイザー(および独ビオンテックの共同開発)製だ。スイスメディックは、入手可能なデータを綿密に検討し、同社製の新型コロナウイルスワクチンが安全であるという結論に達した。その利点はリスクを上回るという。

16歳以上から接種でき、少なくとも21日の間隔をおいて2回接種が必要となる。成人では、2回目の投与から7日後に接種による予防率が90%以上になるという。

連邦保健局(BAG)によると、ワクチンを接種した人でも、感染を予防するかどうかはまだはっきりしていないため、今後、数カ月様子を見る。

接種は義務ではない。費用は国民が加入する基礎医療保険でカバーされ、もし医療保険でカバーされない場合でも州や国が負担するため無料で受けられる。

他社製含め1280万回分を確保

スイス政府は約300万回分を発注し、まずは約10万回分が届けられる。軍薬局でマイナス70℃の中で保管されてから、各州(26州)に配布される。各州では、2~5℃の保冷庫で最長5日間保管するという。

政府は、ファイザー製に加え、米モデルナ製ワクチン450万回分、英アストラゼネカ製ワクチン530万回分の調達もすでに決めている。モデルナ製とアストラゼネカ製は、現在スイスメディックが承認へ向けて検討中だ。

ワクチン接種は以下の人たちが優先的に受けることができる(上から優先)。
1.高齢者や、病気にかかっている高齢者など、特に危険にさらされている人
2.患者と接する医療従事者、特に脆弱な人たちをサポートするスタッフ
3.特に脆弱な人たちと緊密に接する人(世帯員)
4.感染や発生のリスクが高い共同施設の人たち(様々な年齢の人と居住している人たち)

12月は1の「特に危険にさらされている人」が対象で、1月4日から2、3、4と徐々に対象を広げていく。スイスの公共放送によると、12月23日から6州が高齢者施設などで接種開始するのを皮切りに、次週そして1月に入って始める州が続く。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中