最新記事

BOOKS

日本は新興国から「デジタル化・DX」を学ぶべき時代になった

2020年12月30日(水)10時55分
高口康太(ジャーナリスト)

pixelfusion3d-iStock.

<今後は新興国・途上国こそがインターネットの中心になる、と伊藤亜聖『デジタル化する新興国』。新興国のデジタル化はもはやニッチなテーマではなく、そのケタ違いの可能性とリスク、どのような影響があるかを知る必要があるという>

デジタル化、デジタル・トランスフォーメーション(DX)、デジタル庁......新聞や雑誌を見ても、本屋の売り場を眺めても、最近では「デジタル」に関する話題であふれかえっている。

デジタル化の潮流に取り残されていた感のある日本だが、新型コロナウイルスの流行で危機感に火が着いたというところだろうか。

あふれかえるデジタルに関する記事や書籍だが、そのほとんどは日本が、日本企業がどうデジタル化に取り組むべきかという話だ。海外の話は模範とすべき欧米の先進国の事例がほとんどで、その隙間に、「異形のデジタル大国」として注目を集める中国がわずかながら織り込まれているぐらいだろう。

だが、世界は先進国だけで成り立っているわけではない。私たちの視界から抜け落ちがちな、先進国以外でのデジタル化はどのように進んでいるのだろうか。そして、私たちにどのような影響を与えるのだろうか。

この問いに真正面から向き合ったのが、伊藤亜聖(東京大学社会科学研究所准教授)による『デジタル化する新興国――先進国を超えるか、監視社会の到来か』(中公新書、2020年10月)だ。

世界のネットユーザーのうち先進国の国民はわずか10%

本書の冒頭は、古めかしい三輪バイクのタクシーをスマートフォンのアプリから呼び出せるインド、南アフリカのコワーキングスペースで開催されていた女性限定のハッカソン(短期間で集中的にプログラムの開発を行うコンテスト)など、私たちの知らない新興国の一面から始まる。

先進国と新興国の所得格差は大きいものの、デジタル化は先進国にとどまらず、世界で同時並行的に推進していると本書は説く。

貧しい国であってもデジタル化は進む。この状況を作り出したのはグローバルな情報インフラの推進だという。

2000年時点では、世界のインターネットユーザーの約8割が先進国である経済協力開発機構(OECD)諸国の国民によって占められていたが、2017年にはこの比率が約10%にまで減少していると本書は指摘する。非先進国こそが今やインターネット世界のマジョリティなのだ。

インターネット以上に普及が進んでいるのは携帯電話である。2016年に世界の携帯電話契約数は全人類の数を超えた。

もちろん先進国で複数の回線を持っている人が多いとはいえ、2017年には中所得国でも契約回線数と人口がほぼ並び、低所得国でも回線数が人口の半数を超えるなど、先進国と比べればはるかに貧しい国々においても普及は進んでいる。かつては一部の先進国だけだったが、現在では人類の大多数が享受するインフラへと変わりつつある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=下落、予想下回るGDPが圧迫

ビジネス

再送-〔ロイターネクスト〕米第1四半期GDPは上方

ワールド

中国の対ロ支援、西側諸国との関係閉ざす=NATO事

ビジネス

NY外為市場=ドル、対円以外で下落 第1四半期は低
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 3

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP非アイドル系の来日公演

  • 4

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    やっと本気を出した米英から追加支援でウクライナに…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中