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バイデンのアメリカ

若者を魅了した若き日のバイデンに見る「次期大統領」の面影

BIDEN AT THE BEGINNING

2020年11月25日(水)19時20分
ジム・ヌーエル(スレート誌政治記者)

当然ながら、1972年と今のバイデンには数々の違いがある。しかしその一方で、72年の上院選──バイデンの人物像に決定的な影響を及ぼす悲劇的な事故が起きる直前の、希望に満ちあふれていた時代──を振り返ると、彼の本質が当時からほとんど変わっていないことが分かる。

「アンクル・ジョー」の愛称で親しまれ、何かとジョークのネタにされてきたバイデンの人柄は、年月の経過とともに形成されてきたわけではない。彼は最初からあのままだ。

投票年齢引き下げが追い風に

1970年にニューキャッスル郡議員に選出されてから間もなく、ニューズ・ジャーナルはバイデンについて、「自分が知る限り、葉っぱの裏側について即興で15分間のスピーチができる唯一の男だ」という同僚議員のからかいの言葉を伝えた。

その後の政治キャリアを通して数々の問題を引き起こすことになる失言癖も、1970年に掲載された同紙のプロフィール記事に既に表れている。バイデンは、妻のネイリアには「子供たちの人格形成」のために家庭にいてほしいと発言。自分は「女性は子供をたくさん産むべきだと考えるタイプの男」ではないものの、「娘が生まれるまで産み続けてほしいという考えには大賛成だ」と語っている。ネイリアは1971年に長女のナオミを出産した。

口の軽さも常にバイデンに付きまとう課題だ。2019年には大統領選への参戦を正式に表明する前に、自分は「出馬した人の中で最も進歩的」と発言して話題になったが、1971年11月にも似たようなことがあった。自身を上院選の「候補者」と呼び、その日のうちに出馬の確率は「90%」と訂正。モーニング・ニューズ紙に「バイデン、上院選出馬(言っちゃった!)かも」という見出しで揶揄された。

翌1972年には、上院選でボッグズに勝てないという予測を自ら口にする場面もあった。バイデンは「もし私が胴元なら、ボッグズ再選に5対1のオッズを付ける」とモーニング・ニューズに語った。実際、彼が(あるいは、デラウェア州のどんな民主党候補でも)ボッグズのような大物議員に勝てると予想した人は誰一人としていなかった。

ただし、ボッグズが出馬をためらっていた点はバイデンに有利に働いた。ボッグズは1968年時点で既に不出馬を決めていたが、州知事選への影響を考えた共和党上層部が介入。リチャード・ニクソン大統領(当時)もデラウェア州を訪れ、党のために出馬するようボッグズに要請した。

バイデンにはもう1つ、有利な点があった。1972年の選挙は、選挙権を持つ年齢が18歳に引き下げられた初めての選挙だった。そしてバイデンは、単に連邦議会を目指す若き候補者というだけでなく、若者の代弁者でもあった。

1970年の郡議会選でバイデンを支援した「ボランティアの若者たちのコメントは時に、ビートルズの熱狂的ファン以上に熱かった」と、ニューズ・ジャーナルは書いた。「高校生や大学生、若い専門職など150人以上が6月から11月の投票日まで昼夜を問わず働いた」。こうした若者ボランティアのネットワークを再現したことが、上院選初勝利のカギとなった。

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