最新記事

感染症対策

新型コロナワクチン、開発競争の裏でもう一つの課題 極低温輸送の準備急ぐ航空各社

2020年11月22日(日)14時44分

航空各社がこのところ忙殺されているのが、極低温輸送・保管施設の準備である。写真はベルギーのプールスにあるファイザーの研究施設で、新型コロナウイルス向けワクチン試薬が保管された冷凍庫の前を移動する関係者。ファイザー提供(2020年 ロイター)

航空各社がこのところ忙殺されているのが、極低温輸送・保管施設の準備である。運ぶものはファイザーとモデルナが開発するCOVID-19ワクチンだ。最初に流通する可能性が高い両社のワクチンだが、いずれも極低温での輸送・保管が必要となる。

航空貨物関連の業界団体、医薬品輸送企業の団体に対する最近の調査では、この業界に参入している企業のうち、ファイザー製ワクチンが必要とする摂氏マイナス70度(華氏マイナス94度)近い低温での輸送に対応できるとの感触を得ているのはわずか15%だ。モデルナのワクチンが必要とする条件はマイナス20度とやや緩く、約60%の企業が対応できるとしている。

通常、航空会社が医薬品を輸送する場合、ドライアイスなどの冷却剤を投入したコンテナを利用するが、温度調整ができないものもあり、製品が運航の遅延など予期せぬ出来事の影響を受けやすい。

航空各社は現在、極低温を必要とするワクチンの輸送に向けて、小型車ほどのコストがかかる大型の電気冷蔵設備から、液体窒素を用いる多層構造の冷蔵容器に至るまで、さまざまな選択肢を検討している。

こうした高度な梱包技術に対する潜在的需要が見込まれるため、クライオポートや独バキューテックなど冷蔵コンテナ専門企業の株価は、ここ数カ月で2倍以上に上昇している。

大韓航空<003490.KS>の広報担当者は「大韓航空では、温度管理コンテナのメーカー5社と直接契約し、十分な量のコンテナを確保している。現在、それ以外のコンテナメーカーとも契約締結のプロセスに入っている」と話している。

エールフランスKLMでは、製薬会社1社とのワクチン輸送実地試験を急いでいるという。相手企業名については明らかにしなかったが、恐らくアムステルダムのスキポール空港経由で、ダミーのサンプルを極低温で輸送することになる。

エールフランスKLMの特殊貨物担当マネジャーを務めるベアトリス・デルプエク氏がロイターに語ったところでは、この実地試験では、1個当たり最大5000回投与分を収容するボックスを使い、全てドライアイスによって冷却するという。その後の輸送では、バキューテックから貸与されるもっと大型の極低温コンテナを使う可能性がある。

デルプエク氏は「航空輸送のセグメントも含め、始点から終点までロジスティクス全体を検証する必要がある」と語る。「私たちのチーム全体と、プロセスのステップを逐一検証する専門タスクフォースを用意して、どこにも何の障害も残らないようにしている」と話す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

透析・手術用の品目、「安定供給図る体制立ち上げた」

ワールド

トランプ氏、NATOへの関与に否定的発言 集団防衛

ワールド

北朝鮮が固体燃料エンジンの地上燃焼実験、金総書記が

ワールド

ウクライナ大統領がUAE・カタール訪問、防衛協力で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のSNS動画が拡散、動物園で一体何が?
  • 4
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカ…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 9
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 10
    カタール首相、偶然のカメラアングルのせいで「魔法…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 3
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 4
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 8
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中