最新記事

債務の罠

対中デフォルト危機のアフリカ諸国は中国の属国になる?

Does China Engage in Debt Trap Diplomacy?

2020年10月22日(木)17時45分
バシト・マフムード

中国は既にアフリカ諸国の主要な貿易相手国になっている。さらに安全保障でも影響力を広げようと、2018年には北京で第1回中国アフリカ防衛安全保障フォーラムを開催した。

「このフォーラムは中国の人民解放軍が主催し、大半のアフリカ諸国が参加した」と、フィッシャーは言う。「中国はこれを手始めにアフリカ諸国と軍事的な関係を強化し、経済・政治的な誘導と併せて、軍事的なアクセスを確保しようとしている。債務の罠は様々なツールの1つにすぎず、中国は政治、経済、軍事に及ぶはるかに遠大な企みを持っている」

直近の例としては、既にザンビアが中国の債権者に返済延期を求めている。対中債務はザンビアの対外債務120億ドルのざっと4分の1を占める。

ケニアも45億ドルの対中債務について再交渉を望んでいる。ケニアの議会予算割当委員会のキマニ・イチュンワ委員長は地元メディアに「債務問題の解決は実に簡単だ」と述べた。「中国側にわれわれの過失を認めればいい。多額の借金をしたのは事実だが、あなた方も非常に厳しい返済条件を付けた。わが国の経済は疲弊し、返済が困難になっているが、債務を帳消しにしてほしいわけではない。再交渉をして返済条件を変えてほしいだけだ、と」

借金棒引きには難色

10月半ばにテレビ会議方式で行われた20カ国・地域(G20)首脳会議(金融サミット)はコロナ禍で財政が悪化した77カ国・地域の債務の返済を猶予することで合意し、中国も渋々この案をのんだ。ただケニアは、資本市場での資金調達が困難になる恐れがあるため、返済猶予を求めない方針を表明している。

報道によれば、中国は将来的な債務帳消しには二の足を踏んでいる。また中国は全ての国有機関をG20のテレビ会議に参加させたわけではない。そのため十分な救済措置が取られることは望み薄で、世界銀行のチーフエコノミスト、カーメン・ラインハートは関係各国に「最善を願いつつ、最悪に備える」よう呼びかけた。

ジョンズ・ホプキンズ大学の中国アフリカ研究イニシアチブが2015年に発表したデータによると、アフリカの17カ国が危険なレベルの対中債務を抱えており、デフォルトに陥る可能性がある。

コロナ禍で途上国が抱える対中債務はさらに膨張しそうだ。中国はアフリカ諸国が抱える無利子債務を帳消しにしたが、ジョンズ・ホプキンズ大の研究チームによれば、アフリカ諸国の対中債務に占める無利子債務の割合は5%に満たない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、台湾への7億ドル相当の防空ミサイルシステム売却

ワールド

日中局長協議、反論し適切な対応強く求めた=官房長官

ワールド

マスク氏、ホワイトハウス夕食会に出席 トランプ氏と

ビジネス

米エクソン、ルクオイルの海外資産買収を検討=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 10
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中