最新記事

2020米大統領選

トランプを批判し「狙われた」美人知事のさらなる受難

Trump Team Accuses Gov. Whitmer of Encouraging Assassination of President

2020年10月19日(月)16時45分
エミリー・ツァコル

極右の拉致・殺害計画で狙われたミシガン州のホイットマー知事(民主党)。Tom Brenner-REUTERS

<ホイットマー知事の拉致を企てた容疑者たちの襲撃訓練動画を検察が明らかにした。大量の武器は、州政府を転覆し、州議会をも襲うためのものだった可能性もある。これに対してトランプ陣営が持ち出したホイットマーの「トランプ暗殺計画」の証拠とは>

米ミシガン州でグレッチェン・ホイットマー州知事(民主党)の拉致を企てていた極右グループは、武器を集めて銃撃訓練を行い、暗号化されたSNSでホイットマーを「処刑する」相談までしていたことが明らかになった。ミシガン州政府を転覆し、州議会を襲撃する計画もあった。この事件では14人の容疑者が逮捕され、ミシガン州と連邦政府から起訴されているが、検察が18日、これらの証拠を公開した。

ところが、ドナルド・トランプ大統領の再選をめざす選挙対策チームは18日の午後、被害者のホイットマーが、トランプの「暗殺未遂を呼びかけている」と非難した。

その証拠として挙げたのは、ホイットマーがテレビ出演した際に、背景に「8645」の数字がはっきりと見える置物があったこと。18日の朝、NBCニュースの番組「ミート・ザ・プレス」に自室からリモート出演したホイットマーが、司会者のインタビューに答える映像のなかに、この置物が映りこんでいたのだ。

左下の赤丸の中に暗殺指令があると主張するトランプ陣営のツイート


「グレッチェン・ホイットマー知事はテレビ出演中に『86 45』の数字を見せつけた。『86』は誰かを殺すという略語でもある」と、トランプ陣営は知事のインタビュー場面のスクリーンショットと共にツイートした。「ホイットマーは、トランプ大統領に対する暗殺未遂を呼びかけている。わずか数週間前に誰かがリシン入りの小包をホワイトハウスに送ったばかりだというのに」

リシンはヒマの実由来の毒物で、内臓の壊死を引き起こす。トランプ陣営が指摘したリシン入りの小包は、ホワイトハウス宛の郵便物を検査する施設で9月に発見されたものだ。

憎悪と恐怖の感染源

「8645」は、俗語や慣用句のオンライン辞書サイト「アーバン・ディクショナリー」に記載されている数字の意味からすると、「第45代大統領のトランプを取り除く(『86する』)」暗号とも取れるというのが彼らの主張だ。ウェブスター辞典によると、「86」にはスラングで「取り除く」「投げ出す」という意味もあるという。現に、8645をプリントしたアンチ・トランプのTシャツもある。

「こんなヨタ話がニュースになるなんて、他にネタはないのか」と、ホイットマーの広報担当者は18日に本誌に語った。「トランプは新型コロナウイルスのスーパースプレッダーであるだけでなく、憎しみと恐怖のスーパースプレッダーでもある。国民の分断をあおる彼のレトリックは止めさせるべきだ。必要なのは、新型コロナウイルスに打ち勝つために、アメリカをまとめる大統領だ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、「ベネズエラへの一方的圧力に反対」 外相が電

ワールド

中国、海南島で自由貿易実験開始 中堅国並み1130

ワールド

米主要産油3州、第4四半期の石油・ガス生産量は横ば

ビジネス

今回会合での日銀利上げの可能性、高いと考えている=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中